第98話『予選C』
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に数匹見当たるが、これでは狙ってもあまり得をしないだろう。が、
「ま、倒すだけなら5秒もいらないし」
そう言うと、緋翼は目につくスライム全てに焔を灯す。当然、スライム達はなす術もなく倒されていった。結果は『+4pt』。
たかが4点、されど4点だ。もしこの差で予選落ちしようものなら、きっと後悔しか残らないだろう。中学生最後の大会なのだから、悔いのないように挑みたい。だから、
「あいつのためにも、頑張らないと」
今も部員の勝利を願っているであろう、あの憎たらしい少年を頭に思い浮かべ、緋翼は前進するのだった。
*
上空へと射出される晴登の身体。その勢いはまさに弾丸、言わば人間ミサイルであった。
全身に重力がかかり、空気抵抗が凄まじいが、なるべく身体を一直線にして堪える。
「……よし、届いた!」
次第に勢いが収まり、ふと身体が宙に浮いたような感覚を覚えたので、晴登は目を開けてみると、自分が崖よりも高い所にいることを確認できた。
あまりに一瞬の出来事で、正直実感は伴っていない。が、すぐさま着地の準備に入る。
「もう慣れたもんだけど、な!」
崖の上の地面から2mほどの高さだろうか。これくらいであれば、風を使って着地することは造作もない。晴登は問題なく着地した。
「ふぅ、結構ギリギリだったな」
崖の下を見下ろしながら一言。
今のジャンプには結構力を込めたのだが、それでも崖上2mだったのだ。もう少し力を抜いていれば、崖を登れずに落下していたところだった。やっぱり出し惜しみはするもんじゃない。
「さて、と」
今の晴登のジャンプに驚きながら崖を登る選手たちを尻目に、晴登は順位を確認する。崖を一瞬で登ったことはかなりのアドバンテージだ。少なくとも20位は上がったに違いない。
『63位』
「あれ……?」
ここで晴登の思考が一旦止まる。
おかしい、何かの見間違いだろうか。目を擦ってもう一度見てみる。
『65位』
「これは……」
何度見ても結果はほとんど変わらなかった。少し順位が下がっていただけで、やはり60位代だ。
つまり、崖を素早く登れたことで、順位を半分以上も上げたということになる。
「だとするとおかしいよな……」
というのも、分かれ道に入ってから晴登は『崖を登った』だけであって、あまり『先に進んだ』訳ではない。他のルートにも同じく崖があるならまだしも、そうではないなら順位がそこまで上がるはずがないのだ。
「まさか、実はこのルートは近道だったとか……?」
コースの長さが決まっている、という条件を除けば、この仮説は現実味がある。
……
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