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幸せはそこにあった
第三章

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 ある日店に目つきの悪い黒いショートヘアの女が来た、着ている服は白一色であり顔立ちは歯がある駝鳥の様だ。
 その女を見てだ、店長は思わず顔を顰めさせた。
「嫌な奴が来たな」
「あの人確か市会議員の」
「ああ、塩野由利子だよ」
「そうですね」
「いつも文句ばかりクレームばかりでな」
「他人を責めることばかり熱心で」
「肝心の市の行政には何も言わなくてな」
 そうしてというのだ。
「目立ちたいだけのな」
「最低な女ですよね」
「色々黒い噂もあるしな」
「着ている服は白でも」
「過激派だのおかしな利権団体だのタチの悪い組合だのな」
「最低な奴ですね」
「そいつが来るなんてな」
 営業時間に店に来たのだ。
「何しに来た」
「うちの店に来るのはじめてですね」
「庶民がどうとかいいながら庶民のことなんて考えてないさ」
 全く、というのだ。
「全くな」
「考えているのは自分のことだけですね」
「ああ、だからいつも高級な店ばかりだよ」
 庶民の為の政治だの言いつつというのだ。
「本当にな」
「そんな先生がこの店に何の用なんでしょうか」
「絶対にお客さんじゃないな」
 店長は言い切った、そして実際にだった。
 塩野は店長にずかずかと他の客を無視してそうして来ると居丈高に叫んできた。
「うちの犬返してんか!」
「犬!?」
「そや、茶色い垂れ耳の白い犬やろ」
 まさにルークの外見だった。
「大きさは柴犬より少し大きい位で」
「あの犬ですか」
「あの犬はうちの犬や」
 店の客達が顔を顰めさせるのを無視して言ってきた。
「はよ返してんか」
「あの、あの犬は」
 ここで朗が出て来て言ってきた。
「栄養出張でしかも虐待の跡があるんですが」
「えっ、そうなの?」
 店の客達は朗の今の言葉に驚いて声をあげた。
「虐待してたの」
「そうだったの」
「はい、酷かったんですよ」
 朗は客達に話した。
「ボロボロで痩せていて汚くなって殴られた跡があって」
「そこから逃げてきたんだろうな」 
 店長も客達に話した。
「あまりにも酷いんで」
「動物虐待か」
「それって犯罪だよな」
「いつも他人のこと言っていてそれか」
「とんだ正体だな」 
 客達は二人の話を聞いて塩野を見つつ言った。
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