第一章
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幸せはそこにあった
脇坂朗は十八歳で大学に通っている、家は母子家庭でお金がないので頑張って国立は無理だったが学費の安い公立の学校に入学し。
住み込みで大阪の繁華街の居酒屋でアルバイトをしながら大学に通っている、その住み込み先の店で彼は店長にいつも言われていた。
「いいかい?身体が辛かったら」
「それならですか」
「休むんだ」
店長城重留はいつもこう言っていた、穏やかな外見の初老の男だ。ずっと独身でアルバイトの募集に応じて来た朗と二人で暮らしている。彼に部屋を一つ渡して実質的に共同生活を送っている。
「身体を壊してからじゃ遅いからな」
「俺は大丈夫ですよ」
朗は店長に笑顔で返した、くすんだ茶色の髪の毛をショートにしていて顎の先が尖っていて目は大きく澄んでいる。背は一六九程で身体は痩せている。
「高校までずっと陸上部でマラソンしていましたから」
「今も毎朝走ってるからかい」
「体力はありますから」
それでというのだ。
「これ位何でもないですよ、夜はしっかり休んでますし」
寝ているというのだ。
「ですから」
「だといいけれどね」
「大学もアルバイトもです」
両方というのだ。
「やっていきます」
「そうだといいけれどね、しかしね」
「疲れたらですか」
「何時でも俺に言うんだ」
こう朗に言うのだった。
「いいね」
「そうさせてもらいます」
朗も応えた、そしてだった。
彼は大学に通いながらアルバイトも頑張り続けた、忙しいが充実した毎日でバイト代で学費も充分賄えていた。しかも食事はいつも店長がバランスのいいものを作ってくれたし風呂にも入ることが出来ていた。
そうした多忙だが充実した生活の中で。
朗は大学の帰りにある出会いがあった、そして。
住み込み先でもある家に帰って店長に言った。
「あの、拾ったんですが」
「お金をかい?」
「いえ、犬を」
こう言ってだ、朗は。
店長に一匹の犬を見せた、それは柴犬より少し大きい位の大きさで。
白毛だがかなり汚れていて垂れた耳やところどころが茶色になっている犬だった、犬は酷く怯えている様で二人を見て縮こまってガタガタ震えている。
店長はその犬を見て言った。
「随分怖がっているな」
「そうですね」
「クゥ〜〜〜ン・・・・・・」
「正直鼠が出ると嫌だったんだ」
店長はまずは飲食店の天敵の話をした。
「それにやっぱり時々泥棒の話がここでも出るし」
「それで、ですか」
「犬がいたら吠えて鼠も逃げるだろうし」
怖がってというのだ。
「何より番犬にもなるし俺が散歩して運動不足解消にもなるし」
「それじゃあ」
「うちで飼うか、ずっとペットなしで暮らしていたけれど」
店を切り盛
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