第二章
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「それで種類は雑種だな」
「そうでしたか」
「何か随分な」
ジョッシュはジョンを見つつ記者に話した。
「前の飼い主に酷い扱いを受けていたらしいんだよ」
「虐待ですか」
「みたいだな、随分殴られて蹴られて」
「そんなことする人は何処でもいますね」
「そうだよな、本当に」
ジョッシュはおのことは苦い顔で話した。
「俺は喧嘩はしたけれどな」
「そうしたことはですか」
「誰にもしたことはないからな」
「余計にですか」
「そう思ったさ、確かに喧嘩もかっぱらいもドラッグもしたけれどな」
それでもというのだ。
「そうしたことはしなかったからな」
「酷いことをすると思われて」
「それでだよ」
「引き取られて」
「シェルターで仲間になった連中から紹介されてな、それでシェルターの援助も受けてな」
そうしてというのだ。
「俺とこいつは一緒に暮らしはじめて」
「そうしてですか」
「こいつ見てるとふとな」
感じるところがあった、それでというのだ。
「絵を描きはじめたんだよ」
「そうされたんですね」
「ああ、ただ何かな」
「描きたくなってですか」
「描いたんだよ、それでロンドンの街もな」
「描かれて」
「本当にただそれだけで」
描きたくなって描いてというのだ。
「別にどうこうするつもりなかったんだよ」
「絵を売るとか」
「全然な、けれど画商の人に言われて」
そしてというのだ。
「売ったりしてな、自然と絵が売れていって」
「画廊にもですね」
「飾ってもらってな」
「絵がどんどん売れて」
「ラジオでも紹介されて出させてもらって」
ラジオ番組の出演もあってというのだ。
「それでこれまでのことも本に書かせてもらって」
「出版もされましたね」
「ああ、全部こいつに会ってだよ」
ジョッシュはジョンを見つつ記者に話した。
「本当にな」
「そうでしたか」
「こいつに会わなかったら」
温かい目で話した。
「今も俺はどうなっていたか」
「わからないですか」
「そうだろうな」
「では彼はオーセンさんにとって幸せを運んでくれた犬ですね」
「そうだよ、人生ってのはちょっとしたことで変わるんだな」
今度は暖かい顔であった、目だけでなく。
「そのことがわかったよ」
「彼と出会ってから」
「本当にな、それでこれからもな」
「描かれますか」
「ああ、絵をな」
そうするというのだ。
「これからも」
「そうされますか」
「ずっとな、人生捨てたものじゃないよな」
ジョッシュはこうも言った。
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