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SHOCKER 世界を征服したら
忠臣の軌跡
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なかったのだ。吾輩は今まで戦場で捕虜は獲らず、皆殺しにしてきた。
そんな吾輩の亡命を受け入れることで欧米各国は国際的信用が落ちることを恐れたのだ。

やっとのことで一足先にアフリカに亡命していた元貴族の友人の力を借りて秘密裏にケニアになんとか亡命することができた時はホッと胸をなでおろした。
それからはブラックはケニアにある彼の別荘兼研究所に泊まりこむ生活を続けた。





そんなある日―


「これから先、どうするんだ?これからどうするのか決めているのか?」


昼食を食べ終え、ロシアンティーを飲んでいると共に食事を取っていた友人に尋ねられた。

ブラックを受入れてくれた友人……、彼は元貴族である傍ら、民俗学や考古学を研究しており、世界中に拠点があった。帝政が崩壊してもすぐにケニアに亡命できたのはそのためだ。
しかし彼は変わり者だった。『男爵』という貴族の中では最低の位でありながらも他人の目を気にせず、自らの趣味に生きているような人間だった。貴族や高級将校ばかりを集めた舞踏会の時にはタキシードや背広ではなく、黒い毛皮の衣にマンモスの骨の兜を被って登場してきたほどだった。


「特に決めてないな…」


「よかったら俺と一緒に来ないか?研究のために人手を集めているんだ」


彼の話を詳しく聞くとここ、ケニアに気になっている部族がいるらしく彼らを研究するために人手を集めているのだという。その部族は現地特有の土着宗教や呪術を信仰し、同時に『牙の生えた生物』を神聖視しているという。


聞いていて興味が尽きなかった。それに助手としてついて来れば研究費の一部を給金としてブラックに支払うつもりでいるらしいこともまた魅力的だった。
しかし、ブラックはその提案を断ることにした。
友人とはいえずっと頼ってばかりはいられない。既に衣食住の殆どを依存いきっているこの状況で、更に職業まで面倒を見てもらうのは忍びなかったし、何より、元将軍としてのプライドが他人に依存し続けることを拒んだ。


「いや、ずっと世話になるわけにもいかんよ。そろそろ俺は自立するとするさ。近々、ここからも出ていくよ」


そう言うと友人は溜息をつくと、少し寂しそうな顔をして見せた。
きっとこれから孤独になる自分のことを案じてくれているのだろう。
彼は傍から見れば一風変わった男に見えるが、本当は信義の厚い(おとこ)なのだ。


「そうか…。お前がそう言うなら、仕方がないな。
俺はこれからもここで研究を続けるよ。何か困ったことがあったらいつでも頼ってくれ」



数日後、友人に別れを告げるとブラックはベルギー領コンゴへ渡った。
当時、コンゴはベルギーの植民地であったが大戦後の民族自決の流れを受けて独立の機運が徐
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