忠臣の軌跡
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の指揮を執るべくドイツ軍が巣食う帝国東部に赴かれた。それに対するようにブラックはドイツ戦線から首都に一時、帰還していた。
その時だった。
ブラックにとって、いや、ロシア帝国にとって決して忘れることのできないあの事件が起こったのは―。
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首都 ペトログラード
「何でこんなことになったんだ!!!」
吾輩は天井を仰ぐと吠えた。
首都ペトログラードにある最高司令官本部の執務室が怒声で震えた。我ながら凄まじい声量である。
「ふざけるな……戦時中だというのに何故だ!?何故なのだ!?」
吾輩は怒気を孕んだ声で卓上のペトログラード市内の地図を睨みつけた。
地図には所々、赤丸で示された場所がある。
これが意味するのは……現在、反乱が起きている場所である。
当時、首都では偉大なる皇帝陛下が不在のため、皇后陛下とラスプーチンが政府を主導していた。
しかし戦争の長期化による物価の高騰、食料の不足はもとより酷かった国民生活をさらに悪化させた。
それにより国民は挙って「戦争の早期終結・皇帝の退位・食料事情の改善・議会の開設」を求めるようになった。
数日前からストライキやデモが国中で起こり、生産現場からは悲鳴が上がっている。今では市民達はシュプレヒコールを上げながらデモ行進を行っている。
「皇帝は退位しろー!!!」
「戦争の早期終結を!!!」
「労働者に職とパンをよこせーー!!」
このシュプレヒコールは遠く離れた吾輩のいる最高司令官本部まで届いている。最初こそ、その内容に対して怒りを堪えていたが、皇帝を『無能で無用な支配者』と呼ぶようになってからは遂に堪忍袋の緒が切れた。
「我ら国民と労働者に権利を!!自由を!!」
市民はペトログラード中にいる労働者達と手を組み、依然としてシュプレヒコールを叫び続けていた。
その内容にとうに我慢の限界を超えていた吾輩は大声で叫んでしまった。
「馬鹿者共がぁ!!民衆に権利なぞ与えればいつしか必ず増長し、この帝国を蝕むに決まっているではないか!そんなことも分からないのか!」
ひとしきり叫ぶと冷静さを取り戻した。ひとまず落ち着こうと深呼吸をする。
所詮、敵は小勢だ。すぐに首都近辺にいる連隊が賊軍を血祭りに上げることだろう。
事実、先程入った情報では、この叛乱に対して参謀本部はヴォルイニ連隊を鎮圧に向かわせたという。
「まぁ、精々、暴れているがいい。どうせ叛乱なぞ即座に鎮圧されるのだ」
間もなくだ。間もなく、貴様らの叛乱も無事、無駄に終わるのだ。
精々、あの世で後悔するがいい!
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