忠臣の軌跡
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その部屋の扉には『手術中』という赤いランプが照っている。
「改造……手術室?何だこれは?医務室か何かか?」
改造手術という言葉がいまいち理解できなかった。
何らかの手術の術式の類いなのは容易に想像がついた。
「ちょうど手術中のようなので見学しましょうか」
見学といっても吾輩が通されたのは手術台から見て後方にあるガラス越しに区切られた狭い部屋だった。
ガラスを1枚隔てた先では白い覆面に白衣を着た男達が数名、メスや工具を手にして円形手術台に群がっていた。皆、手術台を取り囲むように手術を行っているため、被験者の姿が全く見えず、何の手術をしているのかも分からない。
女によると、この白尽くめの男達は科学戦闘員というらしく、科学分野に長けた戦闘員の集団なのだそうだ。
「手術完了、これより脳改造及び最終調整に入る。ナノロボットを持ってきてくれ」
ガラスの向こうでチーフを務める科学戦闘員が宣言すると他の科学戦闘員は全員、バラバラに散る。
それにより、手術台の上に寝ている被験者の姿が顕になった。
「なっ?!??」
黒く毛深い身体、紅の三目、白く鋭い牙。
その全身はまさに蜘蛛と人間が融合した姿であり、非常にグロテスクなものだった。
おぞましい姿に思わず息を呑み、いくばくか子供のように心臓がばくばくと鳴った。吾輩は震える手で怪物を指差しながら、女に問うた。
「あ、あれは何だ!?何なのだ、あの怪物は!?」
「あれは我がゲルダム団が誇る改造人間です」
「か、改造人間!?」
女は吾輩の方に向き直ると淡々と語り続ける。
「ええ、読んで文字の如く、人工的に人間を超えた人間。それが改造人間です。
元々はナチスが開発し、我がゲルダム団と志を同じくする組織『ショッカー』がさらに発展させたものみたいですがね…。まぁ、彼の組織とは同志のよしみで技術提携を結んでるわけです。
それはそうと凄いんですよ、彼らは。数〜数十トンのパンチ力や俊足は当たり前、個体によっては火炎放射や溶解液の噴射もできるんです」
人間に脅威的な能力を与える人体改造。
そんな技術が実現しているなら世界中の戦争や戦術の概念が根底からひっくり返ってしまう。
ここまで高い技術力を何故、ただのアフリカのカルト教団が有しているのだろうか。
無意識に手足がワナワナと震えた。
すると科学戦闘員の1人が女に駆け寄ってきた。
「蜘蛛男2、最終調整完了しました!覚醒させますか?」
「そうね、お願い。ぜひ、このお客様に見て頂きたいから」
「ギーッ!了解しました!」
科学戦闘員達がスイッチを押すと手術台から高電圧の電気ショックが流される。
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