忠臣の軌跡
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の現状を放置しておく訳がない。放置されているということは存在しないということに他ならない。
勿論、神が意図的に吾輩を見放している可能性も考えられるが、等皆しく神の子である"人間"を見放しているようでは到底、神とは言えない。
「『信じる気になれない』だなんて……。そんな悲しいこと言わずにまずは読んでみてください」
その後、何度も断ったが壊れたレコードのように同じことを繰り返す女に負けて仕方なく読むことにした。
パラリとページを捲る。元々が薄かったためかものの1、2分で読み終えた。
内容を要約するとこうだ。
どんなに優秀な者も愚者が統治するこの腐敗した世界にいる限りは劣等で矮小な凡人と同じレベルに扱われてしまう。ゲルダム団はこれを世界的な問題と捉え、偉大なる教祖様の元、優秀な人間が支配する"正しい世界"の建設を目指して活動しているのだという。
粗方、筋を読むと吾輩は何とも言えない馬鹿らしさを覚えた。思わず肩を竦める。
子供騙しの幼稚な思想だ。自分の不遇は自らより劣等な誰かのせいだとでも言わんばかりの責任転嫁じゃないか。
「……馬鹿馬鹿しい。優秀な人間がその他凡人と同レベルに扱われる?そんなのいつの時代でもあったことではないか……。しかし、その中でも這い上がり、努力した人間こそが真に優秀なのではないのか?こんなことをバカ真面目に広めて回っているのは誰なんだ?」
「ゲルダム団教祖である首領様ですね」
よく考えれば……いや、よく考えなくとも吾輩がした質問は馬鹿らしいものだった。どの宗教団体でもその教義を一番に説き、広めて回るのは教祖に違いないからだ。
吾輩は目を細め、大きく背伸びをするなどあからさまに退屈そうな態度をとった。
女が吾輩の態度に察して諦めて帰ることを期待したのだ。
「もう一度言いますが、首領様は貴方を選ばれたのです。一度、お会いになってみませんか?何かが変わるかもしれませんよ?」
女は決して諦めることなく宗教勧誘を続けた。それどころか自分を教祖の元に連れて行こうとしているのだ。
ここまでくると馬鹿らしさを通り越して呆れてくる。
「どうか我々のところに来てください。我々は貴方を救いたいんです」
……もう、なるようになれ。
どうせ、吾輩は堕ちるところまで墜ちている。
ついて行ったところでどうせ手品の類でも見せられ、高い品々を買うようにせびられるのだろう。まぁ、いずれにせよ、この非常な現実から目を背けられるし、暇潰しくらいにはなる。
教祖がどのような人物なのかも気になった。
「……ハァ、分かった、負けたよ。行くよ、行けばいいんだろ?」
溜息混じりにそう言うと、女の表情が急に明るくなる。
「あり
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