アインクラッド 前編
Prologue
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、サイバー攻撃でコンピューターをウイルスに侵食された一人の学者が雅貴に攻撃先の特定を依頼、雅貴がその場で解決したことから、雅貴のホワイトハッカーとしての腕は口コミで世界中に広がり、今では世界に名だたる有名企業からも依頼を請け負うようになり、たった半年の間に、雅貴はホワイトハッカーと量子物理学者という2つの分野において天才の名をほしいままにして、今に至る。
そして今、雅貴は手紙を全てゴミ箱の中へと叩き込み、同じように電子メールを削除している最中だった。
前のメールをゴミ箱へと移動させ、そのまま惰性で次のメールをドラッグしようとした、その時。画面上に表示されているマウスカーソルが、動きを止めた。差出人が個人だったからだ。大学ではないとすれば勧誘ではなく(学校長などが個人名義で勧誘をしてくることはあっても)、ホワイトハッカーとしての依頼の可能性が高い。雅貴はゆっくりとメールの本文をウインドウに表示し、驚いた。
――そのメールの差出人は、茅場晶彦。彼とは同じ量子物理学者であるため、学会で何度か顔を合わせたこともあり、何か常人では考えもつかないような、良く言えば壮大、悪く言えば非常に恐ろしいことを実行しそうな独特の雰囲気をまとっていて、彼もまた自分と同じように天才であるのだろうと感じたことや、彼が何かを病的なまでに渇望していて、量子物理学も彼にとってその何かを実現させるための手段でしかなく、それを実現させるためならば数人の命さえ意に介さないような、強すぎる意志を感じたこと、その際にメールアドレスを交換したことを覚えている。しかし、今まで一度だってメールのやり取りをしたことは無かったし、何より彼はコンピューター関連の知識も豊富であり、そんな彼がサイバー攻撃を受け、さらに何らかの被害を被った、ということは、あまり考えられなかった。ということはその他の要件ということになるが、前述したように、雅貴は今まで、一度も彼とメールのやり取りをしていない。その彼がどうして今になって雅貴のところにメールを送ってきたのか、雅貴は訝った。そして、いつになく慎重に本文を開くと、そこには次のように書かれていた。
橋本君へ
久しぶりだね。君とは2ヶ月前の学会であったのが最後だったかな?
仕事のほうは順調かな? と、訊いたところで、君が躓くようなことがないのは、分かっているのだけれどね。
さて、それでは早速本題に入ろうか。
実は、私は君を私の世界に招きたいと常々思っていた。そして、ようやく、その機会を手にすることが出来たんだ。
ちなみに、もう招待券は発送済みだ。君がこのメールを読み終わった頃には届くのではないかな?
この招待を受けるか受けないかは君の自由だが、私は是非、君に私の世界を感じてもらいたいし、君の研究にも役立つと思う。それに何より、君にも
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