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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(下)
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星同盟の安全保障における重大な脅威について【根本的な解決】がいよいよ訪れる時が来たからであります」

 議事堂のざわめきの質が変わった。あぁそうだろう、端末を叩いていたメディア席の記者が弾かれたように顔をあげたのが視界の端に映った。
 だが今、自分の眼に映るべきなのは違う、アスターテに送り出した兵だ。自分が率いてイゼルローンの砲座にミサイルを叩きませ、無人艦の為に死んだ若者達だ。

「自由惑星同盟は、その運命を数百億もの自由な男女の自由意志に託してきました。そして意志にも基づき多くの男女が軍服を着、死地に赴き国土と自由を守ってきました。
彼らが守り、そして我らが守る自由。その意味は明白であります。あらゆる場所で全ての市民の人権が至上であることを意味するのです。
我々はごく当たり前の人権を全ての国民が維持するために、侵略者を打ち倒す為に、我らは軍を築き長く血を流してきました。
われわれの強みは、われわれの目的の一致――即ち自由の勝利という至上の価値観を共有しているからであります」

 本当にそうなのかはどうでも良い、美辞麗句だろうとお題目を信じなくとも信じているかのように振舞うからこそ。人間は平等に生きることができるのだ。あぁまったく政治というものは!

「そして自由の勝利した銀河を見ることができるのは遠い彼方のことではないでしょう。我々はこの半世紀の間脅かされてきた安全保障上の問題を解決し、一つの節目、この銀河において自由が勝利する偉大な足掛かりとなる偉業を成し遂げるでしょう。
我々はアスターテにおける戦いで傷つきましたが、それを乗り越える大いなる作戦は既に実現の準備に入っております。
この796年にこそ、我々は専制主義の侵攻手段を破壊する大攻勢をおこなうでしょう!」
 だから――今自分が話している事もこの瞬間は真実となるのだ。同盟全土に中継され、何名かを介してフェザーンにも届くだろう。そしておそらく、イゼルローンにも。

「そう!攻勢ではありません!大攻勢であります!そして我々は先人達が挑んだ戦いは!おける犠牲は!けして無駄ではなかったこと証明し、皆様にご覧いただける事と確信しているのであります!
そしてその時にこそ同盟軍は皆様と共に大きな一つの節目を迎える事と確信しております!
ありがとう、ご清聴ありがとうございました、ありがとう」
 ざわめきながらも万雷の拍手が響き渡る。
 そして宇宙軍大将ドワイト・グリーンヒルは深々と一礼をした。
 マスメディアには常の丁重な紳士としての顔でノー・コメントを貫き通し、D・グリーンヒル大将は盤古に乗り込んだ。

 
 『4月27日、第13艦隊は半個艦隊規模の総力を引き連れて結成後初の大規模演習の為にハイネセンを出立した。』
 この一文にマスメディアの記者達は『偶然なが
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