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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(下)
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素と無骨という形容が相応しいだろう。

 そして同盟議会と異なるのは議員達が一様に浅黒い顔をしている事だ。シドニー・シトレ元帥をはじめとして同盟政府内の高官にも肌の色が濃いものはけして少なくないが――やはり異国情緒、という点ではグリーンヒルにとっては自分が異質な”余所者”であることを強く意識させる。


 だがそれでも――グリーンヒルは訴えかけなければいけないのだ。自分は余所者ではなく、彼らも”余所者”ではないのだと。たとえそう信じない者がどれほど居ようとも。
 民主主義において正義である多数派を無視しようとも、だ。
 グリーンヒルは深呼吸をすると演台から降り注ぐ目線に微笑を浮かべ、一礼を返す。
「モハメド・カイレ人民元帥閣下、人民元老院議長閣下、労兵評議会議長閣下、ヴァンフリート議会の皆さん、そして傍聴に御足労いただいた皆様、この宇宙歴796年の4月26日に両院議員諸賢が小職の為にここで皆様にお話をさせていただく機会を設けてくださったことに感謝いたします」
 メディアのカメラに視線を向けるが意識しないように努める。

「まず最初にこの度のアスターテの戦い、そしてこの157年間続く専制主義者の暴威に晒され星の海の中に眠る無数の人々に向けて祈りを捧げさせていただきたい。
彼らはサジタリウス準州と同盟の国父ハイネセン達が共有する価値観、即ち市民の自由と開拓精神から発展した自由惑星同盟という国家の在り方を尊び、そして故国で育まれた自由市民の精神に従い、勇気を示し銃後の暮らしを守ってくれたことを遺族の方々にお伝えします。彼らの強靭な精神が銃後の人々を守ったのです。そして彼らは勇敢に務めを果たし、帰郷の途に着くのです。どうか皆様もお祈りください、彼らの信仰に叶った安らぎがあらんことを」
 目を閉じたグリーンヒルの胸が大きく動く。

「さて、皆様。一つ、大きな戦いが終わりました。ですが未だ銀河中の市民は恐怖に震え、民主主義は守勢に立ち、民主共和制という人類が勝ち取った偉大な文明は危機に瀕しています。我々はこの150年の間、数多くの耐え難き苦しみと勝利の歓喜を味わい、侵略を防ぐ為に多くの市民が犠牲となりました。
もはや我々は、専制主義者の奴隷に後戻りすることはけしてできない事を知り尽くしております。
疲れ果て悲しみに耐えきれず、平和を求める者も一人として帝国の農奴となりたいと思っている者はいないでしょう。我々は平和を求める為にも今はただ戦い続けることのみが必要とされているのです。
 皆さん、人間は有史以来、常に平和を探し求めてきました。国家間の紛争を防止する、あるいは解決する国際的手続きを創り出す為に、様々な方法がこの長い歴史を通して試みられてきました。個々の市民に関する限り、我々はその答えを知っております。そう、友愛、調和、そして忍
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