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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(下)
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、将校達にとりある者にとっては粘り強い交戦対象(タフ・ネゴシエター)でありある者にとっては轡を並べる戦友でもあり、そして何より庇護対象である。
 自由連邦主義者(リベラル・フェデラリスト)にとっては『社会正義』と『不平等』の板挟みであり逃れえぬ呪縛である。社会民主主義者にとっては救済の対象であり、同時にお荷物である。

「問題はイゼルローンなのだ」

 そして、ハイネセンを中心とした首都圏では【見ず知らずの星】に死体を放り出された者達の遺族が悲しみに打ちひしがれ和平を求めている。だが、平和主義といえば聞こえは良いが講和の目途は立っていない。当たり前だ、そもそも我々を国と認めては帝国の名分が成り立たない。それに対し実質的には【交戦星域】の者は土地を捨てればいいではないかと言っている者達がハイネセンには増えている。そしてそれを公然と『善政』であるかのように言う者も。
「棄民ではないか、それは――」
 アスターテの者が何故船団に乗りながらアスターテの周囲を巡航しているのか。ヴァンフリートのアスカリ達は土地ですらない、小惑星コロニーに暮らしている。アルレスハイムはゴールデンバウム朝に制圧されたら殺戮の対象になる者はいくらでもいる。エル・ファシルとてほんの7〜8年前に本土を失陥したばかりだ。それでも――
「彼らはここで暮らしているのだ」
 【交戦星域】の者達は経済的にも国防としてもバーラトに依存しなければならず、『バーラト・エリート』に複雑極まる感情を抱いている。そこにそうした反戦運動がバーラトで主流派を占めた場合は――
「シリウス政府は搾取に耐えかね、最後には首都であった地球を虐殺した。そしてスラムを潰す為に農奴を作ったのはルドルフだ。そしてそれを支持したのは荒廃した辺境から流れてきた流民が作るスラムと犯罪に耐えかねた都市部の市民達だった。――我々はどうなのだ」
 同盟は民主主義国家だ。だが数の暴力で少数派を切り捨てるとしたらどうなるのだ――妻が眠る土地を――同郷の者を兵卒たちが無理矢理引き剥がし、永遠の別れを告げさせるのか――?

「いかん、いかんな」
 意味のない仮定だ。なによりも自分も娘達が行う作戦が失敗すると端から決め込んでいるようではないか!
 グリーンヒルは大人しく酒でも飲んで寝ようとルームサービスのリストを手に取るが――
「‥‥‥アラックにマルメカヤにバナナ・ビール」
 地酒面してるけどここで育てるの相当大変なんじゃないか?と新たなこの国の謎を見つけてしまったグリーンヒルであった。

「‥‥タピオカミルクティーもあるのか、まさかキャッサバをここで育てているのか?」




 ヴァンフリート議会はそう大きくはない。少なくとも同盟議会と比べると華やかさと壮大さに欠けている。そしてその代わりに簡
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