第三章
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「本当にね」
「本当にいいの?」
「そうさ、家事はまともに出来なくなったけれど」
動きは確かにかなり悪くなっている、それでだ。
「歩けて喋られるからね」
「いいんだ」
「そうさ、お前の世話にはならないよ」
こう言ってそうしてだった。
祖母は自分で玄関を開けて家の中に入った、すると。
ミミはすぐに彼女を出迎えた、すると祖母はミミを見て言った。
「この猫は相変わらずだね」
「ミミずっとお祖母ちゃん待ってたんだよ」
「この猫もかい」
「この猫としか言わないけれどさ」
祖母はミミを名前で呼ばない、いつもこう呼ぶ。
「それでもね」
「私に懐いてるんだね」
「一番ね、お祖母ちゃんがいない間ずっと寂しそうだよ」
「祖母ちゃんの何処がいいんだ」
「猫は自分が好きな相手に懐くっていうから」
小学校の時よりずっと大きくなり今は一七五ある孫は言った。
「だからだよ」
「祖母ちゃんは猫嫌いだよ」
「そうかな」
「そうだよ、祖母ちゃんより先に死ぬ生きものはね」
こう言って祖母は家での生活を再開した、その気難しく不愛想な感じはそのままであった。だがある日。
蒼汰は自分の部屋で休んでいた祖母がミミに言っているのを聞いた。
「こんな身体になったけれどあんたより長生きするよ」
「ニャーーー」
ミミはその祖母のところに座って笑っている様な顔になっていた、祖母はそのミミに対して言っていた。
「あんたも最期まで看取ってあげるからね、ミミ」
「ニャンニャン」
ミミは祖母の言葉がわかっているのかいないのか機嫌のいいままだ、そして。
祖母は一時間程ミミの傍にいてそうして散歩に出た、その時に孫に言った。
「ちょっと行ってくるよ、猫は頼んだよ」
「ミミはだね」
「ああ、そうしな」
こう言って外に出た、その祖母を見送り。
蒼汰は無意識のうちに笑顔になった、そのうえでミミに言った。
「ミミ、ちょっと遊ぼうか」
「ニャン」
ミミも笑顔で応えた、そうして祖母が散歩に出ている間は彼と遊んだ。だが祖母が家に帰るとすぐに祖母のところに行ってしまった。
気難か婆さんとトラ猫 完
2020・11・21
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