第二章
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祖母だけは違いミミが傍に来ても愛想よくしなかった、ご飯をあげても。
「ほら、お食べ」
「ニャーーー」
こう言うだけだった、だが。
ミミはその祖母に笑顔で鳴いた、そして彼女の傍にいると。
いつも喉を鳴らした、蒼汰はそのミミを見て祖母に言った。
「ミミお祖母ちゃんに一番懐いてるよね」
「そうだな」
祖父、孫によく似た顔だが髪の毛が真っ白な彼も言った。
「祖父ちゃん達よりもな」
「お祖母ちゃんにね」
「そうかね」
祖母は不愛想な顔で孫達に応えた。
「そうでも嬉しくないけれどね」
「そうなんだ」
「そうだよ、懐かれてもね」
そうなってもというのだ。
「どうせ祖母ちゃんより早く死ぬからね」
「そうなるかな」
「祖母ちゃんはまだ六十三だよ」
「そのことは知ってるよ」
「人生あと二十年位あるんだよ」
「それならなんだ」
「ミミより長く生きるんだ」
猫は長く生きて二十年だからだというのだ。
「それならだよ」
「懐かれてもなんだ」
「仕方ないよ」
そうだというのだ。
「本当にね」
「そんなものかな」
「そうだよ、お前も大人になればわかるよ」
こう言って祖母は今も憮然としていた、そうしてミミと共に暮らし続けていたが蒼汰が高校生になった時に。
祖母は家で倒れた、脳梗塞だった。幸い命に別状はなかったが。
長い入院、リハビリもあったそれを経てから退院し家に帰って何とかという調子で歩きながら言った。
「全く、参ったよ」
「大丈夫?」
「何とか歩ける様にはなったよ」
支えようとする孫に対してこう返した。
「だから気遣いは無用だよ」
「そうなんだ」
「自分で歩かないと意味ないよ」
こうも言った。
「それにこの通り喋られるしね」
「けれど動きも鈍くなってるし」
「大丈夫だって言ってるよ」
祖母の返事は不愛想なままだった。
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