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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(中)
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グリーンヒル大将達を見送り、公的な役目を終えたデイビット・イロンシはそのまま人民元帥の執務室へと呼び出された
「革命万歳!人民元帥閣下、お呼びでしょうか」
モハメド・カイレ人民元帥は二期七年目、対帝国タカ派の雄として知られている。
ヴァンフリート星域が戦場となった際にアスターテやエル・ファシルと結んだ避難協定を活用し指導力を発揮した事で実務政治屋としても名声を高めている。
このまま何事もなければ同盟政府のの顕職リストに載るか人民元老院の終身議員の座を得るかのどちらかだろう
「そこに座れ、意見を聞きたい」
「意見、ですか」
「次の中央委員会の編成をどうするかだ」
イロンシは物言いたげに唇を舐めるが言葉を飲み込む。
人民政府中央委員会とは要するに閣僚である。イロンシも無任所中央委員として任命されている――同盟弁務官に選出された者はそう扱われるのだ。
「下院の選挙は翌年初であったと思いますが」
だからこそだ、と最高指導者は肩をすくめた。
「選挙の結果も加味したうえでハイネセンとの付き合いの舵を取るのは俺だ。”国防民主主義”もハイネセンの貴族共が思うよりは面倒だ」
モハメド・カイレは人民元帥の座につくまで相応の苦労をしてきた。同盟軍においては彼は隕石加工や機雷敷設などを任務とする工作艦の艦長、戦闘工作艦隊の司令官を務め、ヴァンフリートにおいては掃宙公社の役員、そして工業プラント【オバサンジョ】の自治評議会専務評議員兼書記長を務め、将校及び相当技官から選出される人民元老院オバサンジョ選出議員を経て政府中央委員会の商工担当常務委員として入閣し、そして6年に一度の中将達が争う――この国の大将は人民防衛軍参謀総長ただ一人であり、選任されれば人民元帥選挙への被選挙権を失う――人民元帥選挙に勝利したのだ
つまるところ彼はヴァンフリート将校としては珍しい、議員経験の薄い
技術官僚
(
テクノクラート
)
であった。 歴代の人民元帥として少々珍しいのは【同盟弁務官】や同盟下院議員を経験していない事である。
彼にとってハイネセンは最大に取引相手であり、経済的に見れば保護者であり、そして従属せざるを得ない宗主国であり――複雑な感情を抱いている。
いやまぁそれは向こうから見ても同じなのだが、とイロンシは内心、苦笑する。
「ハイネセンの連中は『元帥閣下』は労兵評議会も好きにできると思って嫌がる」
人民元帥
(
ピープルズマーシャル
)
、
最高指導者
(
ディクタトール
)
、アルレスハイムの政治学者のエプレボ
人民元帥
(
ピープルズマーシャル
)
、
最高指導者
(
ディクタトール
)
、その独特の響きは『ルドルフ以上にルドルフらしい』などと云われることもあるが、実は6年一期という任期が定められている。
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