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戦国異伝供書
第百十三話 鬼計その十一

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「そうなりますな」
「高倉城を囲む兵もおるがな」
「それでもかなりの兵が来ますな」
「優に四倍以上はな」
「その四倍以上の敵に背水の陣を敷き鉄砲と長槍も使って戦う」
「そうするのじゃ」
「左様でありますか」
「まず勝てぬな」
「はい、それがしとしては」
 小次郎は己の考えも述べた。
「観音堂山城に籠城して戦う方が」
「その方が楽であるな」
「そうかと」
「しかしわしは違う」
「敢えて戦うのですか」
「城を囲まれては長い戦になる、そうなればな」
 長い戦になればというのだ。
「力の弱い我等の方が不利じゃ」
「だからですな」
「ここはな」
「敢えて外に出て戦いますか」
「そうする、そしてな」
「大いに戦いますか」
「そうじゃ、戦はすぐに終わらせる」
「それがよいですか」
「戦は長くかかっていいことはない」
 政宗は言い切った。
「力を使う一方じゃ、だからな」
「それで、ですな」
「外に出て戦い」
「すぐに終わらせますか」
「そうじゃ、そして戦うからにはな」
「勝つのですな」
「だから全ての手を打つのじゃ」
 背水の陣も鉄砲も長槍もというのだ。
「そうするのじゃ」
「左様ですか」
「よいな、ではな」
「これよりですな」
「兵を動かすぞ」
「川を渡りますか」
「そうするのじゃ」
 こう言ってだった、政宗は六千の兵と家の主な将帥達を率いてそうして瀬戸川を渡り陣を敷いた。その彼等の前に。
 佐竹家と芦名家を軸とする五家の軍勢が来た、その数たるやかなりのもので野を埋め尽くさんばかりであった、だが。
 五つの軍勢は一目見ただけでばらばらとわかった、それで政宗は不敵な笑みを浮かべて述べた。
「やはり家が多いとな」
「船頭も多いですな」
「そうじゃ、それではじゃ」
 片倉に対して話した。
「その敵とな」
「今から戦う」
「そうする、守りを固めるぞ」
 陣のそれをというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
 片倉も頷いた、そうしてだった。
 政宗は法螺貝を鳴らさせた、ここに伊達家の運命の戦がはじまった。


第百十三話   完


                 2020・9・8
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