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戦国異伝供書
第百十三話 鬼計その九

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「わしもじゃ」
「川を渡られ」
「自ら戦う、そしてな」
「勝ちますか」
「敵は四倍以上数だけで勝ったと思っておる」
「その敵兵にですな」
「鉄砲も使いな」
「全て死兵となって戦い」
「そして勝つのじゃ」
「そうしますか」
「ではじゃ」
「これよりですな」
「爺には先陣を命じる」
 こう茂庭に告げた。
「よいな」
「わかり申した」
「敵は鉄砲は碌に持っておらぬ」
「数百もは」
「我等は奥羽の全ての家を合わせたより遥かに多くの鉄砲を持っておる」
「その鉄砲をですな」
「ふんだんに使ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「戦うぞ」
「さすれば」
「あの佐竹家も鉄砲はな」
 敵で最も大きなあの家でもというのだ。
「そこまではじゃ」
「鉄砲はですな」
「持っておらぬ、そして槍もな」
 これもというのだ。
「長くはない」
「当家のもの程は」
「そしてじゃ」 
 さらにというのだ。
「弓矢もな」
「我等のものよりはな」
「間合いは短い」
「そして具足も古い」
「それでは」
「兵の数は少ないが我等は多くの長所がある、また飯もじゃ」
 これもというのだ。
「ふんだんに食える」
「はい、腹が減ってはです」
 まさにとだ、茂庭は政宗に答えた。
「戦は出来ぬので」
「たらふく食えるのならな」
「それだけで全く違いまする」
「そうであるな」
「では」
「うむ、ふんだんに食ってな」
「戦いましょうぞ」
「勝ったなら飲むぞ」
 政宗はこうも言った。
「よいな」
「勝利の美酒ですな」
「それを飽きるまで飲むぞ」
 こちらの話もするのだった。
「よいな」
「さすれば」
「爺も死ぬでないぞ」
「はい、先陣を務め」
「無事に生きて帰るな」
「そうしてきます」
「必ずな、では軍議に入ろう」
 こうも言ってだった、政宗は軍議を開いた。そうしてその軍議の場で地図の上に両軍の布陣を駒で置いてから言った。
「もう敵は数をじゃ」
「それを頼んできますな」
「うむ」
 片倉に対して答えた。
「布陣を見てわかる」
「左様ですな」
「こちらをな」
「数で一気に潰しますな」
「そのつもりじゃ」
「では」
「それを逆手に取ってな」
 そうしてというのだ。
「我等は戦う」
「攻め寄せる敵にですな」
「鉄砲を放ち」
「長槍も向けて」
「そして隙を見せれば鉄砲騎馬隊を突っ込ませる」
「そうして戦ってですな」
「勝つのじゃ、こちらは寡兵」
 政宗はこの事実をあらためて述べた。
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