第一章
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ハッピーホワイトキャット
鮎河鞠子はこの時項垂れて大学の友人後藤沙央梨に言った。
「もう学校辞めるわ」
「授業料払えないから」
「残念だけれどね」
すっかり何もなくなったアパートの一室で言った、茶色のショートヘアで一六八位のすらりとした長身できりっとした顔立ちである。だがそのきりっとした顔立ちは今は項垂れていて暗いものになっている。
「それしかないわ」
「アパートも出るしね」
「バイト先が潰れてね」
「ずっとバイト代払えなくなっていて」
「それで家賃も滞納してたし」
「出ることになったしね」
「ええ、だから学校も辞めて」
そしてというのだ。
「これからはどうするかよ」
「実家に帰ったら?」
沙央梨はこう提案した、面長でおっとりとした感じの目で色白である。黒髪をロングにしていて背は一五二位で胸はあまりない。ズボンの鞠子と違ってロングスカートである。二人共セーターを着ているが鞠子は赤で沙央梨は青だ。
「そうしたら?」
「広島の方の」
「お母さんおられるのよね」
「ええ、けれど高校出てね」
「一人で暮らすからって言って出たのよね」
「ええ、心配しないでって言って」
そうしてというのだ。
「出たからね」
「だからなのね」
「戻るのもね」
今いる東京からというのだ。
「どうもね」
「お母さんだけだし」
「うち母子家庭だったしね、私がものごころつく前に離婚して」
「それでよね」
「お母さんはいるし実家に帰ったらそこで就職してもいいけれど」
それでもというのだ。
「出来るだけね」
「お母さんのお世話にはなのね」
「なりたくないわ」
「そうなのね」
「暫くネットカフェで寝泊まりして」
とりあえずの金はあった、余計なものは全部売ってそれであったのだ。
「それでね」
「お仕事探して」
「やってくわ」
「そうするのね」
「ええ、何とか生きるから」
「何かあったら言ってね」
沙央梨は友人を気遣って声をかけた。
「そうしてね」
「いいわ、一人でやってくから」
「そんなこと言わないでね」
沙央梨は鞠子に微笑んで言った、そうしてだった。
二人でアパートを後にした、鞠子はそのままネットカフェに向かいそこを拠点としてとりあえずの仕事を探すつもりだった、だが。
道にあるものを見付けた、それは。
「子猫!?」
「そうよね」
二人でその子猫を見て言った、子猫は生まれて少し経った位だったが。
全身血だらけだった、それで沙央梨は言った。
「烏に襲われたのかしら」
「そうかしら」
「死んでる?」
「いや、ちょっと待って」
鞠子はその猫を見て言った、見れば。
僅かに動いていた、そして。
「ニャ〜〜〜・・・・・・」
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