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レーヴァティン
第百八十話 トランシルバニアへその九

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「あれは国家守護の為やったやろ」
「個人の贅沢じゃないな」
「そう考えてくとな」
「本当に日本で建築ってないな」
「他の国と違って」
「そうだな、それで俺も日本人だからか」
「自分の気質もあるにしても」
 それでもとだ、美奈代は久志に話した。
「それでもやろな」
「このこともあってか」
「あんたもうちも他の皆もな」
「建築に興味なくてか」
「贅沢のな、それで他のことでもな」
 馳走にしても服にしてもというのだ。
「あまりな」
「贅沢じゃないんだな」
「そやろな。そしてな」
 美奈代はさらに話した。
「そのこともな」
「いいんだな」
「宮殿とか建てて下手にお金と人手使うよりな」
「戦に使ってな」
「そして何よりも内政に使ってるやろ」
「自分が遊ぶのに使うとかな」 
 久志はどうかという顔で言った。
「国費を」
「それは論外やな」
「それじゃあどっかの馬鹿な領主だろ」
「幸いこの浮島そうした領主滅多におらんけどな」
「そうだな、ガラツの領主は金に汚くてもな」
 その彼の話もした。
「それでもな」
「やることはやってるな」
「だからいいな」
「民から搾り取ることもないさかい」
「いいな、そのこともいいことだな」
「東の浮島でもね」
 清音はそちらの話をした。
「そんな馬鹿な領主はそうはいないわよ」
「滅多にな」
「そのことは二つの浮島にとって幸いよ」
「さよな、己の贅沢の為に民から搾り取るとかな」
「童話とかでよくあるにしても」
「そんな奴最低だからな」
 久志は一言で言い捨てた。
「文字通りにな」
「ええ、民を苦しめてね」
「国も亡ぼすからな」
「それこそ何処かの将軍様よ」
 あの世襲の独裁者と同じだというのだ。
「本当にね」
「そいうだよな」
「だからね」
 それでとだ、清音は久志に話した。
「ああしたのがいなくて」
「二つの浮島はそれだけで助かってるな」
「自分の体制維持だけを考えてね」
「軍隊に金やたら使ってな」
「内政は全くしないで」
 そしてというのだ、実際にこの国は内政はほぼしていないと言っていいだろう。都市整備もインフラも農業も工業も何もかもについてだ。
「軍隊に力入れてね」
「核兵器持ってな」
「軍隊は凄くても」
「数だけな」
 装備は極めて旧式なものばかりだ。
「それで自分の贅沢にもだよな」
「国家の予算の二割は使っているわ」
「アホだな」
 久志は一言で切り捨てた。
「正真正銘の」
「そう言うしかないわね」
「しかも軍事費は二割五分だろ」
「国家予算のね」
「金が出るばかりで」
 それでというのだ。
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