第百十三話 鬼計その三
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「阿武隈川に向かうぞ」
「そうしますな」
「そしてな」
「そこで、ですな」
「畠山家の主殿を討ち」
そうしてというのだ。
「父上を害したことを大義名分にしてじゃ」
「すぐにですな」
「二本松を攻めますな」
「そうする」
共にいる片倉と成実にも話した。
「よいな」
「はい、それでは」
「手筈通りに」
「爺にもじゃ」
兵を用意させている彼にもというのだ。
「ことが進めばな」
「お伝えしてですな」
「そのうえで」
「動いてもらう、ここで二本松を手に入れてな」
そうしてというのだ。
「そしてじゃ」
「南に向かう足掛かりとする」
「そうしますな」
「左様、では次の報を待とう」
政宗は二人に話してそのうえで鷹狩を続けた、一見遊んでいる様であったがその実は違っていた。
明らかに身構えていた、それでだった。
城の門まで畠山を見送った輝宗を突如畠山が彼を捕らえそうして二本松へと引き揚げにかかったのを聞いて政宗は言った。
「ではな」
「今よりですな」
「すぐにですな」
「その場に向かうぞ」
片倉と成実にも話した。
「馬に乗ってな」
「もう馬は用意しています」
小次郎が言ってきた。
「では」
「皆の者すぐに馬に乗るぞ」
そうして輝宗のところに向かうというのだ。
「よいな、鉄砲もじゃ」
「そちらもですな」
「持って行く」
小次郎に答えた。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「ことの仕上げにかかるぞ、見事かかったからにはな」
弟に笑みを浮かべて話した。
「それならばじゃ」
「最後の最後まで、ですな」
「ことを進める」
その様にするというのだ。
「よいな」
「わかり申した、では」
「行くぞ」
政宗は自ら馬に乗って他の者を率いて阿武隈川の方に向かった、当然鷹狩りに浸かった鷹は連れている。そうしてだった。
瞬く間に川岸に着いて今輝宗を連れて渡ろうとしている一行を見た、輝宗は水色の伊達家の服だが他の者は違うのですぐにわかった。
それでそこにいる人相の悪い者に問うた。
「お主が畠山家の主殿が」
「だとすればどうする」
その者畠山義継は政宗を見据えつつ言葉を返した。
「一体」
「お主の魂胆はわかっておる」
政宗は馬に乗ったまま述べた。
「父上を人質に話を有利に進めるつもりじゃな、それも芦名家や佐竹家にとって」
「答えるつもりはない」
畠山は政宗の言葉に苦い顔になったが答えなかった。
「そのことにはな」
「ならよい、しかしじゃ」
「それでもか」
「お主が父上を離さぬなら覚悟はよいな」
その時はというのだ。
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