第一話 底のない絶望その十二
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希望にだ。また言うのだった。
「僕が戻って来るまで少しだけ待って下さい」
「少しだけなら」
「そうです。少しだけでいいです」
切実な顔での言葉だった。
「耐えて下さい」
「少しだけ・・・・・・」
しかしそれでもだった。今の希望にはだ。
その少しの間さえ耐えられなかった。真人がいない状況はだ。
それでだ。また言うのだった。
「そうだね。何とか」
「頑張れますか?」
「正直に言っていいかな」
項垂れた顔になりだ。希望は言った。
「このことを」
「はい、では」
「御免、無理かも知れない」
今の状況ではだ。それはとてもだった。
このことを言いだ。また言う彼だった。
「今までも。友井君がいてくれたから何とかやっていけたから」
「その僕がここにいるから」
「家にいたくないよ」
今はまずそこだった。家だった。
そしてだ。さらにだった。
「学校にもね。二学期になっても」
「だからですか」
「うん、だから」
それ故にだと述べてだ。希望は。
さらに辛い顔になりだ。そして言うのだった。
「何処か。家も学校も離れて」
「難しいですね」
「本当にどうしたらいいのかな」
折れそうになっていた。心が。
「今は」
「せめて僕の代わりに」
どうかというのだった。真人は。
切実な、それでいて辛い顔になりだ。希望に言ったのである。
「誰かもう一人いてくれたら」
「友井君みたいな人がだね」
「そう、いてくれたら」
こうだ。彼は希望を心から心配しながら言ったのだった。
「遠井君を守ってくれる人、理解してくれる人がいたら」
「それなら」
「有り難いのですが」
「いる筈がないよ」
その可能性をだ。希望はだ。
信じなかった。信じられなかった。それでだ。
こうだ。辛い顔で言ったのである。ここでもだ。
「友井君以外に。僕をわかってくれる人は」
「誰かいますよ」
山でのことをだ。また言う真人だった。
「必ず。ですから」
「出てくれたらいいけれど」
それでもだと述べてだ。希望はだ。
真人を見つつだ。そして言ったのだった。
「けれど僕はそうした人がいるなんて」
とても思えなかった。魔の彼はだ。
それで辛い顔のままでだ。今は真人の前から去った。真人はその彼の寂しい背中を心配する顔でベッドの中から見ていた。彼のことを案じながら。
希望の辛い状況は続く。しかしだ。
夏の中、八月の最初の頃にだ。町を彷徨っていた彼の前にだ。
一人の少女がいた。その少女は。
小柄で楚々とした外見の娘だった。髪は黒く長い。
身体つきは華奢で細い
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