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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
梔子とぺトリコール、紅涙
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るいめいた──肩が跳ねたあの余韻が、まだ残っている。鼓膜を震わす蠱惑的な吐息だけが、虚空に霧散していった。
その中に、自分の心臓が早鐘を打っているのが聞こえた。自分に聞こえているのだから、この鼓動は、きっと──アリアにも、きっと、聞こえているのだろう。今の自分の脈搏は、忙しなく100以上を打っているに違いない。そう確信した。


「……ねぇ、アタシの脈搏(プルス)って聞こえてる?」


徐にアリアは顔を上げた。暮れた斜陽を背に浴びながら、赤紫色の瞳を、逆光の中で返照させている。吐息が直に伝わってくる。
こうして見詰め合うのは、果たしていつぶりだろうか。アリアの顔を見るのも、なんだか久しく思えた。悪戯的な笑みのその内に、羞恥を押し込めたような色をしていた。


「聞こえてる。キチンと」
「……アタシも、聞こえてるから」



この一言二言で、問いの真意を推量ることは、出来た。こと彼女にしては、どちらかと言うと抽象的な気もする。
要するにアリアは、脈搏を通して自分の感情を伝えたいのだ。一種のローマンチックめいた、在り来りな方法で。

密着な衣服を隔てた間近に、周期的に身体を震わす拍動が、今も聞こえている。やはり100以上を打っていた。
そうして、なかなか翳りを見せない歳相応の少年少女の恋情のような──何故だかそんな風に、思えてしまった。

とはいえ、とりわけアリアが自分にそんな感情を抱いている……とは分からない。好意的に思われていることは間違いないけれど、どの段階での好意的なのか──友人か、親友か、パートナーか、異性か。そんなことすら気にしていないかもしれない。それなら単なる『羞恥心』として区切りを付けた方が簡単だろう。


「ねぇ、今こうして抱き締めあってるけれども──」
「……分かってる。恥ずかしいよ」


「でも」と次ぐ最中に、息を呑む音が聞こえた。


「──でも、嬉しかったから」


刹那に抱いた感情は、もう名前を知っている。そうして、この子は何処まで可愛らしいんだとさえ思ってしまった。
窓硝子から見える、この黄昏時の五月空のように果てがなくて、あの揺蕩う千切れ雲のように奔放で、時折見せる常花のような仕草に──やはり何度も、惹かれているから。

だからこそ、彼女の運命が昏れ往く黄昏のように、或いは霧散する千切れ雲のように見えて仕様がないとも、思ってしまっている。路傍の折花にも似通ったそれが、アリアの背に乗っかっていて、いずれ自分が手を伸ばそうとも伸ばし切れないままに、泡沫を掴んでしまう──それがどれほど怖いことなのか、分かろうとする以上に分かりすぎていた。夕冷えにも似た感覚が、震懾に、背のあたりを這いずり廻らせていた。


「アリアの前を、自分から去るよう
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