肆ノ巻
御霊
5
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ぎゅ〜」
なんかブツブツいってたけど、あたしは無視して背中からがっとのしかかってやった。
それでもなんか言ってたけど、しばらくたったら落ち着いてきたのか、高彬の手が後ろにまわってきて、ぽんぽん、と乗っかっているあたしの足のあたりを叩いた。もう機嫌は治ったということだろう。
「ヘンなとこ触んないでね」
しかしそれとこれとは別。お尻の近くに手が当たったからしっかり釘をさすことは忘れないぞ。
「んじゃ、帰りましょうか…あたしたちも」
それから、ポツリと高彬の耳元で言った。
後ろで抹も荷物を纏めているようだ。音がする。
よし、と立ち上がって振りかえったら、そこに満面の笑みで両手を広げて待ち構えている惟伎高がいた。
「…?」
それを目視して、険しい顔をしてあたしはふむと考え込んだ。惟伎高はほらほらと催促するように手を小さく動かす。よし。あたしはパチンと指を鳴らした。
「行きなさい、高彬」
「義兄上、一体何をされようとしているのですか…?」
サッとあたしの前に出た高彬がヤツと同じように両手を広げてじわりじわりと惟伎高にせまる。こちらからはその背中しか見えないが、惟伎高がそんな高彬を見て冷や汗をかいて後退る。
「いやっ、高彬どの!ここ、これは…ほんの冗談でして…」
「あんたよくこの流れでそれやろうと思ったわね。あたしが喜んで飛び込むとでも思った?腕離した瞬間あんた高彬の刀で首と胴体バイバイよ?そうならなくて良かったわね?いやむしろそうした方が面白いもの見れたかしら?残念ね。はい高彬、どうぞ全力でゴキュウしてあげて。兄弟の感動の抱擁よ。嬉しいわねぇ〜惟伎高?」
「おいっ!おかしいだろ効果音!ピィ!贔屓だぞ!なんで抹は良くて俺は…ぐあああああああ、高彬どの、本気…!」
「義兄上どのに相対するは一切手を抜くわけにはいかぬと。それが何事であれ。そう教えられて参りました」
「あ、天晴れな心意気ではあるがそれは時と場合にああああああ」
惟伎高の断末魔を聞いて抹がくすくすと笑う。
「仲の良い御兄弟であらせられますね」
「そう見える?だってさ、良かったわね〜惟伎高!」
「これは仲良くしてるんじゃなくて俺が一方的に八つ当たられてるだけ…!」
「ああ、義兄上、忘れておりました。瑠螺蔚さんを保護して頂いた感謝と、あと瑠螺蔚さんと共にどのように過ごされたのかを、じっくり、お聞かせ願いたい」
「いや死ぬ!ピィ!早く高彬どのを連れていってくれ…!」
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