肆ノ巻
御霊
5
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したちはいつでもあんたを大歓迎するってことよ。あんたは一人じゃないから…それを覚えていて。離れていても。どこにいても。いつだって…ねぇ抹、ぎゅってしていい?」
これでお別れだから。
言葉にしなくてもそれはここにいる皆がわかってる。
抹は驚いたように一瞬目を見開き、そっと、恥ずかしそうに微笑んだ。それから、なんと、抹のほうから腕を伸ばし、とても不器用にあたしを抱きしめてくれたのだ!
わー!抹!あの抹が!
「尼君様…いつも逃げてばかりで申し訳ありませんでした…。けして、嫌なわけではなかったのです、いつも…。ですが、わたくしは誰かにこうされたことなどなくて、尼君様は女人ですし、振り払われるわけでもなく、こうやって触れてくる人など側におらず…」
「そんな浮かせたみたいなのじゃなくて、もっとちゃんと触れていいわよ?あたし頑丈だし。はいぎゅー」
抹は男だってわかっても、なんだかやっぱり、甘くなっちゃうなぁ。惟伎高がおんなじ事しようモンならぶっとばすところだけど。
抹は…親から…こうして抱かれることもないどころか座敷牢から喉が枯れるまで叫び続けても出して貰えず、伸ばした手を振り払われ、ずっと傷ついてきたんだな…。その場所に帰るという。並大抵の覚悟じゃない。抹、応援してるよ。抹、でもさ、頑張るのも大事だけど、でも、いつでもあたしたちは側にいるからね…。忘れないで。
「幸せです。わたくしは」
「幸せになるのはこれからでしょ?」
「おぅい、お二人さん、そろそろいーかー?」
すっかり存在を忘れていた惟伎高の声にナンダとそちらを向くと、惟伎高は指で頻りと隣を指差してる。
その指の先を見れば…不自然にこちらに背中を向けて座している高彬がいた。
高彬何やって…まさか…拗ねてる?
あたしは思わず抹に顔を戻すと、抹もちょうど見開いた目をあたしに向けたところだった。ふっ、と二人同時に笑い声が漏れる。
「旦那の目の前で他の男と抱き合うとはな。ピィもなかなかやる」
「男って言ったって…抹はあんたみたいなムサイ生臭坊主とは違うから!あたしだって相手があんたならお断りよ!」
あたしは惟伎高のからかう声に返しながら、畳の上を膝で高彬ににじり寄る。
「たーかーあーきーら!」
「…瑠螺蔚さん、僕はね、そんなに心が広いわけではないようだ」
「そのようね。でも今のは許して?抹もあたしに興味なんて微塵もないから」
「…興味あるなしではなくて、あなたに誰かが触れているのが…」
「はい
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