肆ノ巻
御霊
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らと光る涙が縁取る。
武士の家だという抹の生家…そこで、どれだけ不遇な時を過ごし、どれだけ辛い思いをしたのだろう、この子は…。
「とりあえず一緒に来て、あとのことはそれから考えよう。ね?何をするの自由よ。なんでもできる。高彬も側にいるし、思う存分鍛えてもらったら?今のあんたほそっちいもん。あたしが勘違いするのも無理ないと思わない?あ、そうだ、高彬つきの忍もいるのよ。腕は立つと思う。きっとあいつも協力してくれると思うわ。嫌がってもやらせるし。あ、そうだ、あんたすごく丁寧に料理してるから、ぜひそういうのあたしに教えてよ。丁寧とか時間かけてとかあんまり性にあわなくてさ〜。ね?また一緒になにか作ろうよ。一緒にいれば時間なんてたっぷりあるし…。ああ、なにもしなくてもいいわよ、心配しないで!そうよね、別になにかしないといけないわけじゃないのよ。ただ、一緒に、花でも鳥でもながめて暮らしましょうよ。もう二度と…あんたに…」
抹はその瞳からばらばらと涙を溢していた。とめどなく。あたしはそこが限界だった。言葉が詰まって、視界一杯にある抹の顔が滲む。
だって。この子が、一体そんな傷つかなきゃいけない、何を、したってのよ!
あたしは右手でぐいと自分の目を乱暴に拭った。
「もう二度と、あんたに花の色が変わるのを待たせたりしない。色なんて気にする暇ないぐらい、一緒に楽しく暮らすんだから…!」
ああ、抹からしたらあたしはとてつもなく悪い鬼かもしれない。せっかくした決心を揺るがそうとする、楽な方へと唆す、悪い鬼…。
わかってるのに、でもやっぱり抹にはこれ以上苦しんでほしくなくて、あたし達がいるよとわかって欲しくて…言い募る言葉が止まらない。
「尼君様、尼君様…」
抹は唇を噛みしめ、ぼろぼろ泣きながらしかし首を横に振った。とても苦しそうな顔をしている。ああ、ごめんなさい、抹…。
「ごめんね抹、こんなこと言ってごめん。惑わせてごめんね」
「なぜあなた様が謝られるのですか!嬉しいです。嬉しいんです。本当に。本当に…わたくしには…夢のよう」
抹は笑った。涙でぐちゃぐちゃの顔で。でもなにも無理してない自然な笑顔で、それがとても美しい。
「尼君様のおっしゃっていただけたこと、本当に全てが、理想で、夢でした。幼き頃から夢見ていたこと…願わくば、そこに…父母が…」
抹は遠くを見るように目を細めた。
「いいえ、今となっては詮無きこと…」
ああ、父母の如何だけはあたしにはどうにもしてあげられない。かわりのないものだから。
「抹…。あんたに覚えててほしいのは、あた
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