ターン36 家紋町の戦い(後)
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でも骨や内臓に異常が起きなかったのは、とっさに腕のデュエルディスクから実体化してこぼれ出た銀の液体が地面に落ちてグレイ型宇宙人の細い腕を伸ばし、最低限のクッションとなったからだった。それでも痛みから立ち上がれずにいる少女を見下ろした男が、また口を開く。
「カードを2枚、マジェスペクター・トルネードともう1枚をセットする。まだやる気か?いくら立ち上がろうとも、自分に合っていないデッキを使っているようでは勝てるはずがないというのに」
「え……?」
痛みのせいで集中しきれず、今かけられた言葉の意味がよく理解できない少女。子のデッキが、グレイドルが、自分に合っていない、とはどういう意味だろう。混乱する思考を頼みのスライムは助けてくれるどころか、むしろ深刻な声色でその意見に同調した。
『やはり、あの人も気づいていましたか』
「あ、あの」
『……ここしばらくあなたのことを陰ながら見守ってきましたが、あなたはすごく地頭がいいんですよ。私たちグレイドルは自分から盤面を積極的にコントロールすることももちろんできますが、その本質は受け身なものです。私たちとあなたの相性が悪い、とは言いません。初心者のうちから複雑なカードの応酬についていけ、多角的に盤面を検討できるあなたは、間違いなくコントロールデッキ向きです。ただあなたの美点を最大限に生かすことができるのは私たちのような受け身のコントロールではなく、より積極的に流れを作りに行く攻めのコントロール、だと思います』
ぽつりぽつりと語られる言葉の意味が、少し遅れて少女に染み渡っていく。しかし不思議なことに、それをひどいとは思わなかった。むしろ、足りないピースが埋まっていくような奇妙な充足感がその胸中から湧き上がってくる。自分に合ったカード、自分に合ったデッキ。これまで周りのデッキ分布が素直なビートダウンばかりに固まっていた竹丸にとって、コントロール色の極めて強いマジェスペクターとの邂逅は全く新しい未知の刺激だった。こんな状況でなければ、それをもっと喜ぶこともできただろう。
『あなたが私たちを最初のデッキに選んでくれたことは、私もうれしく思います。だから私も、あなたに感じた死相の原因を突き止めるまで一時的に清明さんのところを離脱してこちらに来ました。ですがあなたが最初に私たちを選んだのには、グレイドルへの興味だけでなく清明さんへの憧れが入り混じっています。あの人は学生のころからそこそこ程度にモテてましたからね……と、それは置いておいて。もう一度、考えてみるのもいいかもしれませんよ』
とはいえまずはこの状況をどうにかしないとですね、と言い添えるのも忘れず、スライムの気配が引いていく。話を聞くうちにようやく体が動くようになり、壁に手をついて店内のショーケースにもたれかかりながらも、どうにか立ち
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