ターン36 家紋町の戦い(後)
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は立てて、なおかつその上で敗北してもらい人質作戦は失敗に終わる。その程度の弱者を適当に見繕っておいたのですが、今頑張っている彼はどこからどんな命を受けて入り込んだのか。ああまったく、不愉快極まりませんね」
デュエルをしている男自身ではなく、その後ろに存在だけが透けて見える第三者への激しい苛立ち。吐き捨てるような言葉の激しさは、巴は巴なりの価値観の元にデュエルモンスターズと、そして眼前の糸巻と真剣に向き合っていることの裏返しでもあった。
「私、は」
そしてはるか離れた海上プラントで、そんな会話が行われているとも露知らず。すっかり青い顔になってしまった文学少女が、眼鏡の奥の瞳に怯えの色を浮かべて小さく途切れ途切れに声を出す。
痛いのは怖い。怖いのは嫌だ。まして八卦ちゃんを倒した相手、私に勝てるわけがない。私はただ、皆で一緒にこのデュエルモンスターズというカードゲームをやりたかっただけなのに、どうしてこんなことに。色々な感情がぐちゃぐちゃに溢れ、視界が涙で滲みだす。
それでも最後の最後、サレンダーしようとする少女を躊躇わせていたのは、まさにその傷つき倒れた親友の姿だった。せめて、せめて彼女のためにも一矢報いたい。
だけど、自分にそれができるのか?自分の内側から発せられる冷徹な言葉が、重く心にのしかかる。膝が折れそうになる。その場に立っていられなくなる。
『いやいや、私としてはそこで踏ん張ろうって気になれるだけでもすっごく偉いと思いますよ?私も待機していた甲斐がありました、まずはこの場を一緒に乗り切りましょう!』
何の前触れもなく響いたのは底抜けに明るい、まるでこの場にそぐわない声。この場に誰が来てくれたのかと左右を見渡すが、誰も電気をつけていなかったため薄暗い店内には少女自身と男、そして気を失った2人しか存在しない。
それどころか目の前の男が、まるで今の大声に反応していない。まるで、最初から何も聞こえていないかのように。
「え……?」
幽霊。そんな言葉が脳裏をちらつき、ぐちゃぐちゃと頭の中で散らかっていた全ての感情が背筋も凍るような恐怖に一時的に上書きされる。
『ああ、申し遅れましたね。私です私、手札の右から2番目!グレイドル・スライムですよ、私!いえいっ!』
「え、ええっ!?」
右から2番目の手札に反射的に目をやると、そこには確かにグレイドル・スライムのカード。ただのイラストでしかないはずの巨大な黒目が、カードの中でぱちりとウインクしたように見えて思わず竹丸はその目をしばたかせた。
『いやー、宇宙のどこかで私の同胞が生まれる!……ような気がしたんですが、どうも空模様が悪くて結局まだ見ぬ同胞とは会うことができず。聞くも涙語るも涙な傷心の旅のさなか……と、今はそん
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