ターン36 家紋町の戦い(後)
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いない、というのが重要だったんですよ。彼ならプロデュエリスト相手にもそこそこやれるだけの実力があり、しかもどこに出してもデュエルポリスから目を付けられる恐れがない。どこで使おうかと思うと、そして貴女がどれだけ被害を受けるのかを考えるだけで胸が高鳴るような珠玉の逸材。この計画に、それもあちらの部隊に使うつもりは間違ってもなかったのですが……どうも気に食わないことに、私とは異なる指示系統が存在するようですね」
予想外の事態がよほど苛立たせているのか、いつになく簡単に情報を明かす巴。その言葉に含まれた矛盾とも思える箇所に、糸巻が眉をひそませる。
「ん?ちょっと待て。そんな大した奴だから、人質を取りに行かせたんじゃないのか?」
「それは違います、むしろ真逆ですよ。いいですか、私は貴女が大嫌いです。今こうして同じ空間と時間を共有し同じ地球の空気を吸っているという事実を感じるだけで、頭痛と吐き気と腹痛がします」
「そーかいそーかい、これが終わったらアタシの公式グッズ、プロマイドの在庫全部留置所に送り付けてやるから覚悟しとけ」
「ですが、だからこそ貴女とのデュエルは他の要素が混じってはいけないんですよ。純然たる実力差によってあらゆる抵抗を叩き潰し、二度と立ち上がることすらできないほどに心の底から絶望と敗北を刻みつける。そうでなくてはいけないし、そうあるのが世界の正しい形です」
「気色悪っ。新興宗教の先生か何かか?」
片端から入る当の本人からの茶々入れは聞こえているのかいないのかまるで意に介さず、熱に浮かされたような目つきで吐き捨てられる声にも次第に力がこもっていく。
「なんというか、すんごいラブコールよね。むかーしあれぐらい歪んだ愛の形を撒き散らしてた人……人?と殺りあったことがあるけど、あれと匹敵しそう」
「……俺には巴さんと同レベルの人がほかにもいる方が怖い。世界って広いんだな」
「……うん、まあ、人というか男というか女というか。結局どっちだったんだろ」
いつの間にか復活していた清明が、画面に注意を払ったまま芋虫のように床を這いずって倒れたままの鳥居を束の間の話相手に選ぶ。ひそひそ声で距離をおく男2人の動向には気づきすらしないほど、巴は自らの演説に集中していた。
「そもそも人質を取ること自体、こと貴女とのデュエルに関しては私は反対だったんですよ。貴女はそれこそ『お優しい』ですからね、効くに決まってます。だが、そこに意味はない。美しい勝利とはなりえない。これを言い出したのは私の今のパトロン、『BV』目当てにすり寄ってきた薄汚いマフィアの頭です」
「フン、だから僕ちゃん悪くないんでしゅーってか?」
「これでも組織勤めは、色々と面倒事があるんですよ。表と裏、世界の違いこそあれど貴女もそうでしょう?だから最低限のメンツ
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