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戦国異伝供書
第百十二話 はったりその九

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「やはり」
「あちらが攻めてきてな」
「そうですな」
「しかしな」
「攻めませぬな」
「こちらからはな」
「やはりまずは奥羽ですな」
「奥羽を手中に収めるまでは」
 その時まではというのだ。
「それまではな」
「決してですな」
「関東には入らぬ」
「そのことは守りますな」
「わしはな、まずは奥羽じゃ」
 このことを守るというのだ。
「何があってもな」
「関東はそこから先である」
「そう考えておる」
「そうしますな」
「しかし殿」
 成実も言ってきた。
「関東のことは」
「常に見ておく」
「忍の者を送って」
「その様にする」
 まさにというのだ。
「その時はな」
「左様ですな」
「佐竹家だけでなくな」
「北条家もですな」
「あの家もな」
「見ておきますな」
「うむ」
 その様にするというのだ。
「そうする」
「来たるべき時の為に」
「見ておく、ただ佐竹家よりもな」
「関東となりますと」
「今は北条家じゃ」
 この家だというのだ。
「関東のかなりの部分を領有しておられるな」
「今や」
「あの家こそじゃ」
「最も見るべき家ですか」
「上杉家と並んでな」
「関東管領であられる」
「上杉殿に勝てるか」
 政宗は問うた。
「果たしてな」
「あの御仁ですが」
 片倉がすぐに強張った顔で言ってきた。
「軍神、毘沙門天の化身とです」
「言われておるな」
「毘沙門天を信仰しておられ」
「その心を強くお持ちでな」
「その為か戦では敵知らずで」
 それこそだ。
「甲斐の武田程の方でなかればです」
「互角に勝てぬな」
「互角の兵では」
「流石のわしもじゃ」
 自信家の政宗でもというのだ。
「流石にな」
「あの御仁にはですな」
「互角の兵ではな」
 到底というのだ。
「勝てぬ」
「左様ですな」
「だからな」
「それで、ですな」
「上杉殿とは互角の兵では戦わぬ」
 そうするというのだ。
「絶対にな」
「そうされますな」
「何があろうともな」
 こう片倉に話した。
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