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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第80話 あの人からのお招き3/3
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女が言い終わる前に事は起こったのだった。その鬼の少女の両手から、何か形容し難いエネルギーが放出されたのである。
 それは迷う事なく彼女に向けられたのであった。その行動に彼女は成す術もなく捕らえられてしまった。
「うわっ……」
 彼女はそう上擦った声を出すだけで精一杯であった。気付けば彼女はそのエネルギーにすっぽりと身を包まれていたのだから。
 そして、彼女の視界は虹色のモヤモヤしたものに支配されていったのであった。

◇ ◇ ◇

 その後彼女が行き着いた先。後になって分かった事であるが、そこは鎌倉時代位の日本であったようだ。驚くべき事に、彼女は時間を遡り過去に飛ばされたのであった。
 そのようにして、無防備で準備もしていない状態で彼女は右も左も分からない世界へと放り込まれてしまったのである。
 そのような状況で彼女が生きて行く事は困難だったであろう──彼女が人間のままであったなら。
 だが、その時から彼女は人間ではなく妖怪として目覚めたのだった。そして、彼女は妖怪としての力をメキメキとつけていき、この過去の世界を生き抜いていった。
 ──この頃から彼女は『八雲紫』と名乗る事にしたのだった。普段着にもよく選ぶ色の紫と、外国人でありながら日本を愛した小泉八雲にあやかっての彼女の新たなる名前であった。
 だが、家族とも最愛の親友とも生き別れてしまった紫は孤独であった。頼れるものは己自身のみだった。
 後に九尾の狐を自分の式にして八雲藍の名前を与え、その藍が更に猫又を式にして橙と名付け新たな家族が出来ていったものの、紫の心にはぽっかりとスキマが開いたままであったのである。
 そこで彼女が出会ったのが『幻想郷』であった。この楽園は全てを受け入れるような優しさと残酷さを兼ね備えた素敵な場所だった。勿論、人間から妖怪への道を辿ったイレギュラーな存在である紫であっても迷う事なくである。
 そして、幻想郷が紫の新たなる故郷となったのであった。

◇ ◇ ◇

「と、ここまでが私の生い立ちの話ですわ。信じるか信じないかはあなた達次第だけどね」
 そう壮大な話をし終えた紫は、憑き物の落ちたような雰囲気を醸し出していたのだ。
 そして、紫がこのような重大な話をすると言う事は今この場にいる者達を信頼しているからに他ならなかったのだった。
 それは藍や橙といった家族は勿論、勇美、そして豊姫にも信用を託している事の裏付けなのである。
 その紫に信頼されている者の一人の勇美は実感するのだった。
 今紫が話した重大な事があるが故に、幻想郷を誰よりも愛するが故に綿月姉妹をヒーローたらしめて地上に手出しさせない事でそれを護ろうとしたのだろうと。
 対して、もう一人信頼された人物である豊姫はこんな事を言い始めたのである。
「紫……あなたとはい
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