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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第79話 あの人からのお招き2/3
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の。故にいよいよを以て八雲家の玄関は開け放たれたのである。
「ようこそ我が家へおいで下さいましたわ」
 そう言って玄関の引き戸を開けて出迎えてくれたのは、名前の通りの紫色が基調の服装をしたスキマ妖怪、八雲紫その人であった。
 その姿を見て勇美は安堵を覚える。その理由は弾幕ごっこを通して自分と絆の芽生えた存在そのものであるからだ。故に心を許していいというものであろう。
「こんにちは紫さん。いえ、今はこんばんはの方がいいですかね?」
 そう勇美が指摘するように、もう太陽は地平線に隠れて、もうすぐその仕事を夜の闇へと交代する寸前であったのだ。
「う〜ん、私にはその辺りは余り興味ないわねぇ〜……」
 紫がそうのたまうのは何故かと勇美が思っていると、後ろから助け船、はたまた横槍というべきかのものが割り込んで来た。
「紫様が寝られるのは昼夜問わずですからね」
 そう言って入り込んで来たのは、紫の従者たる八雲藍であった。
「何よ藍〜、失礼じゃないのよ〜」
「いえ、本当の事ですから」
 そのように砕けたやり取りをする二人からは、家族の絆のようなものが感じ取れるのであった。
「家族……ですね」
 そんな二人の温かみのあるやり取りを見ながら勇美は思わず呟いていたのである。そう、彼女にはそのような愛情には余り恵まれなかったのだから。
「勇美ちゃん……」
 それには豊姫も心苦しいものを感じる。彼女は家族に恵まれ、更には掛け替えのない師匠にも恵まれたのだから、そのようなものに恵まれなかった勇美の事を完全に分かってあげられなくてやるせない心持ちとなるのだ。
 勇美はそんな豊姫の様子を察し、咄嗟に謝る。
「ごめんなさい豊姫さん、余計な気を遣わせてしまって。今では私にとって永遠亭が家族同然だというのに……」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
 勇美が自分達の事を家族として受け止めてくれている。その事に豊姫は喜ばしいものを感じた。
「……」
 そんな勇美と豊姫のやり取りに紫は無言で見据えていた。彼女にも何か思う所があるのだろう。
 だが、紫は心機一転して次の言葉を紡ぎ出した。
「ようこそ八雲家へ。今夜はゆっくりしていくといいですわ」
「はい、お世話になります」
「よろしく頼むわね」
 紫の挨拶に、客人たる二人は快く言葉を返すのだった。

◇ ◇ ◇

 そして、勇美と豊姫は藍に案内されるままに、一つの部屋へと向かっていった。
 その最中、勇美は思っていた。ここはまるで民宿のように風情がある所だと。派手さ、豪華さは少ないものの、しっかりとした赴きのある造りが見る者を和ませるかのようであると。
 そう勇美が思っている中、とうとう藍の案内の元に部屋へと着いた二人であった。
「夕食までもうすぐだからな、暫くここで過ごしているといい」
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