第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第74話 高みへの挑戦:3/3
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ザーは背中に背負っていた大刀を再びその両手に持ち直し、触手に一太刀を浴びせたのだ。
甲高い音が鳴り響いたと思った次の瞬間、その触手は間接部分から分解されて細切れにされていたのだった。そして、ドカドカとその触手の断片達は地面に落ちていった。
「おやまあ……」
敵の思いがけない奮闘に、紫は感心した様子で見据えながら呟いた。
だが、決して余裕は消えていなかった。次に紫はこう言った。
「やりますわね。でも、このパラドックスの怪の世界は特殊でしてね……」
そう言うと紫は威勢よく手に持った扇子を振りかざした。
「!?」
その瞬間勇美は異様な雰囲気を感じた。その感覚に間違いがない事が次に示される事となる。
紫が扇子を振りかざしたのを合図にして、細切れにした触手の断片が発光体のように眩く一瞬輝いたのだ。そして、続け様にそれは起こった。
切り離された断片が、それ自体が意思を持っているかのように次々と本体の機械クラゲの元へと戻っていったのだった。それはビデオの逆再生の如く的確にであった。
つまり、その今起こった事とは……。
「触手が再生しちゃった……!?」
勇美はひっくり返りそうな声で言ったのが答えであった。
つまり、敵の状態が元の木阿弥となってしまったという事である。ブラックカイザーの先程の快進撃が無駄となってしまったのだ。
そんな彼らを紫は見据えながら呟く。
「あらら……、ちょっとスパイスが効き過ぎちゃったかしら?」
いくらやり手に成長したとはいえ、人間の少女たる勇美には些か辛口の味付けだったかと紫は密かに心の中で反省しながら彼女を見ていた。
そして、俯く勇美の表情は伺いしれない。
「……」
そんな勇美を見ながら紫は思う。でも、あなたならこれ位乗り越えられるでしょうと。何せ私が見込んだ存在なのだからと。
紫がそう思っていると、徐々に勇美はその顔を上げていったのだった。
その表情は……実に晴れ晴れとしていたのである。
「いやあ、素晴らしいです紫さん!」
「はえっ?」
思いもしなかった勇美の言葉に、今度は紫がひっくり返った声を出す番であった。そういう状況になりつつも、勇美相手にこういう感情を抱くのにもだんだん慣れてしまいそうな自分が嫌になったりもしていた。
だが、取り敢えず紫は勇美の真意を聞く事にする。
「……どういう風の吹き回しかしら?」
「だって、巨大なボディーに加えて再生能力といったら、『ラスボスの醍醐味』でしょう? だからついワクワクしてしまいましてね〜」
「んまあ……」
等と、紫は勇美の言い分に彼女らしからぬ返答の仕方をしてしまった。それ位勇美のふてぶてしい理論には意表を突かれたという訳だ。
だが、何とか気を取り直して紫はこう返す。
「言葉が一丁前でも、それでやられ
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