第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第73話 高みへの挑戦:2/3
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応してしまったという事なのだ。
どうやら目の前の相手の評価は再度改めなければならない。紫はそう思うとフッと哀愁を含んだ笑いをこぼしたのであった。
そこまで思ったなら善は急げである。紫はいち早く今発動しているスペルの解除を試みるのだった。
「『ワルプルギスの夜』……それは魔女達が山で行うお祭りの事。その名前のこの催し物は気に入ってくれたかしら?」
『迷い家』という山で迷った際に行き着く未知の場所に棲む者故に思いついた洒落たネーミングのスペルだといえるだろう。そんな素敵な感性の持ち主である紫に勇美は感心して言った。
「ええ、紫さんのセンス、素晴らしいですね」
「まあ……」
そう思いもしなかった感想を勇美からもらって、紫は面食らって密かに頬を紅潮させてしまったのだった。
そのように賞賛されるケースが紫には少なかったからである。紫色のドレスがうんたらかんたらとか、BBAなのに少女趣味だとか……。
うん、誰が言ったのか忘れたけど、思い出したら仕置きをしておこう、紫はそう心に誓った。
それはさておき、今は自分の事を褒めてくれた事でも株が上がった勇美に目を向けなくてはならないだろう。そう紫は思い直し、『ワルプルギスの夜』の発動を停止させた。
それにより、辺りを覆っていた霧は、まるで排水溝に吸い込まれるかのように一気に掻き消えていったのである。
そして、気付けば元の赤と紫色のグラデーションの奇妙な空間が残されていたのだった。
「戻ってきましたね……」
勇美はそう呟きながら胸を踊らせる。紫が発動しているスペルを解除したいう事は、彼女を追い詰めている状態の裏付けといえるからであった。その事を実感して勇美は気が引き締まる思いとなる。
「順調にやっているわね、勇美」
今の勇美の奮闘っぷりは、依姫にも分かるようであった。故に彼女は勇美へ労いの意思を見せたのだ。
「はい、依姫さん。この調子で行きますよ♪」
対して勇美も意気揚々と応えて見せるのだった。
「……」
その様子を見ながら紫は無言で考えを巡らすのだった。──勇美の強さの一因は、この『神霊の依り代』との絆があってこそだと実感として伝わってくるのである。
それは素晴らしい事である。人は誰かとの強い結びつきがあってこそ力を発揮出来るというものだからだ。そう、かつての自分も……。
そこまで想って紫は複雑な感情に頭の中を支配されていった。その様々な自分の想いに応えるべく、紫は次なる行動のプランを頭の中で巡らせるのだった。
「あなた達の絆……、ちょっと邪魔させてもらおうかしら……?」
「えっ?」
紫がさりげなく呟いた言葉であったが、勇美はそれを僅かにだが耳に入れた。
どういう事だろう? 紫の真意は分からないが、何か嫌な予感がする。そう思い勇美は改めて気を引き
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