第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第72話 高みへの挑戦:1/3
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「それで、貴方としても不服はないわね」
そう言って依姫は、紫に対しても勇美と弾幕ごっこをする事への意思の確認をするのだった。
「ええ、私としても問題ないわね、面白そうだし」
そう言う紫の振る舞いは、いつも通りの扇子で口を隠してころころ笑うというものであった。
それを見ながら勇美はごくりと唾を飲み込む。目の前にいる強大な存在と、いよいよ自分は戦うのかと。
そう勇美が意気込んでいると、突如として紫が彼女に呼び掛けた。
「……ところで勇美さん。これは私からの餞別ですわ。是非受け取って下さいね」
「えっ?」
そう言うと紫はパチンと指を鳴らした。
何の事だろう? 勇美がそう思う暇もなく、彼女の感覚に異変が生じたのだ。
すると、勇美の体の周りが淡い光で包まれたのだ。それによる勇美の感覚は『心地よい』というものであった。
そればかりではない。先程の玉兎達との戦いや、境界の迷路の探索によりやや疲弊していた勇美の体力が瞬く間に回復していくのが分かったのだ。
そして、やがて勇美を包んでいた光は収まったのだった。それが意味する所は。
「驚きました、完全回復ですね。紫さん、一体何をしたのですか?」
「なあに、ちょっと勇美さんの充足と消耗の境界をいじっただけの事ですわ。これで全力のあなたと戦える、それだけの事ですよ」
「ほええ〜……」
勇美はそんな紫の言い草に呆気に取られてしまう。紫は実にあっさりと言っている事だが、その内容が常軌を逸しているのは勇美にも分かるのであった。
その様子を見ていた依姫は訝って言った。
「……一体どういう風の吹き回しかしら?」
「何、あなたから受けた恩を返したまでですよ」
そう紫は事も無げに言ってのけた。
そう、紫は今恩を返したのだ。
かつて、依姫は月で魔理沙の提案を受けて敢えて弾幕ごっこで勝負を受けた、その事に対してである。
「これで、五分五分になるかは分かりませんけどね」
そう言って紫はどこか哀愁めいた様子でそうのたまった。
「いいえ、粋な計らいですよ」
それに対して依姫はにやりと笑って答え、その笑みを勇美にも見せたのだった。
「依姫さん?」
「こうして折角境界の妖怪からプレゼントを貰えた事ですし、この勝負頑張りなさい♪」
「はいっ!」
そう勇美はとびきり良い返事をしたのだった、依姫と紫の両者に向けて。
◇ ◇ ◇
「では、始めますとしましょう」
「はい、よろしくお願いします」
そう二人は言い合うと、互いに向き合ったのだ。
紫は胡散臭いといえども、その本質はやはり幻想少女のようだ。いつもの掴み所のない雰囲気はややなりを潜め、どこか真剣な雰囲気が伝わってきたのだった。
続いて彼女は勇美にこのような事を申し出て来た。
「まずは私からいかせ
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