暁 〜小説投稿サイト〜
『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
恋愛-しゅぎょう-
[1/5]
[8]
前話
前書き
[1]
次
最後
[2]
次話
一つ、彼の願いが聞こえた。
彼の人生はひどく平凡で、またひどくつまらないものだった。
子供の頃は友達はそれなりにはいたが、社会に出てからは彼は文字通り奴隷となった。
なんの刺激もなく、なんの楽しみもなく、
行きたくもない会社といつ崩れてもおかしくなさそうなボロいアパートを行き来するだけの毎日。
休日出勤なんてのも当たり前だったし、飲み会だって義務として無理矢理飲みたくもないものを飲まされ聞きたくもない上司の長々とした武勇伝も聞かされた。
自分の時間もなく、心休まる時はわずかしかなく、
次第に彼の心はじわじわと死んでいく。
そんな中、死ぬ間際彼の願いが…大和くんの願いが私の胸中に伝わってきた。
つまらない人生とおさらばできるなら大歓迎だ。
ただ、
人並みの恋愛は…してみたかったと。
私は…生涯を刀と共に生きてきた剣豪だ。
そんな私に、彼の願いを叶えるのはほぼ無理なのはわかってる。
でも、私は彼のサーヴァントだ。
どうにか出来ないか…なんとかしてあげられないか?
色々考えるものの、込み上げてきた羞恥心が勝って何も出来ず終わってしまう。
何か距離感を縮められるものはないか、
そう悩んでいた時、大和くんからあの話を持ちかけられた。
私の弟子にして欲しいと。
弟子ってなんだ。そしたら人並みの恋愛が余計に出来なくなるんじゃないか?弟子と師匠って、余計に距離感が遠ざかっちゃいないだろうか?
しかし他にどうにもできなかった。
大和くんの目は本気だったし、断ったとしてもそれでも何度も頼み込んでくるだろう。
私というサーヴァントに、相応しいマスターになりたい。
あれだけ大切にしてくれたんだ、もう充分相応しいよ。
そんな簡単なことも言えず、私は…。
「ほらほら!遅い遅い!」
「っ…くぅ!」
昨日の雨が嘘のように晴れ渡る中、
私は大和くんの稽古に付き合っていた。
不思議な力で出てきた紅い刀を使い、私に無我夢中で打ち込んでいく。
1本でも取れたら勝ち。
さらに私は腕一本のみ動かしていいとハンデをつけてはいるが、今現在有利なのは私だ。
「ダメだ…っ!」
「ほら休まないの。ならこっちから行くわよ!」
攻めるだけ攻めさせてあげたんだから次はこっちの番だ。
肩で息をする大和くんに接近し、峰ではあるものの、本気で打ち込んでいく。
「っ…!」
ギリギリで防いでいるものの、疲弊しているせいか今にもうち負けそうだ。
しかしここで手加減してあげるほど私は優しくない。
「ごっ!?」
刀を手の内でくるりと回し、柄を大和くんの鳩尾にめりこませる。
肺の中の空気が無理矢理出された呻き声を上げ、大和くんはその場にしゃがみ込んだ。
「はい、今日の稽古おしまい。」
[8]
前話
前書き
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ