第壱話「コマイヌとネコマタ」
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が抗議していたが、烈火は特に聞いている様子もなく、鬼灯を連れてそのまま路地裏を出ていってしまった。
あとに残されたのは、ハクジとタマキの2人だけである。
ハクジは両手を合わせ、深々と頭を下げた。
「頼む、カリム中隊長にだけは言わないでくれ……」
「どうしよっかな〜。興梠には入隊してから毎日のようにスケベられてるし……」
「わざとじゃないんだ!俺も不本意なんだよ!!」
慌てて弁明するハクジ。
日頃から迷惑かけている事を気にしている彼は、そこを突かれるとどうにも弱い。
「頼む!これまでのお詫びと今回のお礼を兼ねて、今度駅前のスイーツご馳走するから!!」
「え、いいの!?」
「初任給入ったら奢ってやる!だから勘弁してくれ!!」
綺麗な角度で再び頭を下げるハクジ。
その瞬間、タマキの表情が変わった。
駅前スイーツ。その一言で目がキラキラし始めたのだ。
「今度オープンする予定のあの店でもいい?」
「構わん。行きたい店を選べ!」
「オープン記念のケーキバイキングでもいい?」
「好きなだけ食え!持ち帰り分も奢ってやる!」
「おお……おおおおお!?」
頭を下げたまま、勢いに任せて答えるハクジ。
彼からの魅力的な提案に、タマキはすっかり乗り気になっていた。
「そ、そういう事なら……考えてあげなくもないかな〜?」
「本当に、古達ちゃんにはいつも迷惑をかけてしまって……だから、どんな形でもいい。少しでも借りを返したいんだ」
「……興梠、頭上げて」
タマキの声のトーンが、浮かれたものから真面目なものに変わった。
言われるまま、頭を上げるハクジ。
彼の目に映ったのは、自分を真っ直ぐに見つめるタマキの顔だった。
「興梠……私、お前が思ってるほど、気にしてないぞ?」
「……え?」
「いや、確かにラッキースケベの件は許してないけどさ……。でも、あれはそもそも私に原因があるわけだし……むしろ、迷惑かけてるのは私の方っていうか……」
「いやいやそんな、古達ちゃんはただ、そのよく分からない体質に振り回されてるだけで……」
「何だよ〜、それはそっちだって同じだろー?」
「それは……そうだけど……」
「だったら、これでお相子。貸しとか借りとかなし!それでいいだろ?」
そこでニカッと笑って見せるタマキ。
ハクジは一瞬、頬を赤らめ顔を逸らす。
「ま、まあ……そういう事なら……」
だが、ハクジの頭頂のアホ毛はブンブンと風を切って揺れていた。
「それじゃ、戻るかー。中隊長達に報告しないといけないし」
「そうだな。今頃、他の部隊も鎮魂を終えてる頃だろ──」
そう言って、2人が路地裏を出ようとしたその時……ハプニングは起こった。
なんと、ハクジの足元に案の
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