第百七十九話 渡河その八
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「馬をな」
「買うんやな」
「ああ、出来るだけ多くな」
「敵の騎兵隊の馬も買うか」
「流石にそれは無理だろうな」
久志はこう予想して述べた。
「幾ら何でもな」
「敵も売らんか」
「馬がない騎兵隊って何だよ」
そもそもというのだ。
「だから相手もな」
「自分等の馬は売らんか」
「まともな奴はな、騎士が自分の馬を売るとかな」
「大金積まれてもな」
「それは相当な馬鹿だぜ」
自分の乗っている馬を売る、そうした騎士はというのだ。
「そしてそこまでの馬鹿はな」
「滅多におらんな」
「騎士失格レベルだからな」
「それでやな」
「流石にそれは無理だ、けれどな」
それでもとだ、久志は美奈代に話した。
「こっちが馬を多く買うとな」
「その分やな」
「敵に馬が渡らないしな、馬は多いとな」
「多いだけ有り難いわ」
「だからな」
「出来るだけ買うな」
「そうしていくな」
こう美奈代に言うのだった。
「今度は」
「そしてまぐさもやな」
「出来るだけな」
「わかったわ、そうしてくな」
「そっちは頼むぜ」
「騎兵隊の馬は今は一人に一頭はあるでござるが」
今度は進太が言ってきた。
「出来ればでござる」
「もっと欲しいか」
「騎兵としては」
「そうなんだな」
「一人二頭いえ三頭あると」
「万全か」
「そうでござる」
進太は久志にその騎兵を率いる者として話した。
「いざという時に次に乗る馬が必要でござる」
「それでか」
「馬が傷付き」
「戦いで死ぬこともあるな」
「回復や復活の術をかける間も」
馬に対してだ。
「代わりの馬がいればすぐに乗れるでござる」
「だから三頭必要か」
「そうでござる、そして馬に乗っていれば」
進太はさらに話した。
「馬も疲れるでござる」
「人も重いしな」
「武装していれば余計に」
「甲冑や武器の重さでな」
「だからでござる」
それ故にというのだ。
「馬が疲れた時にでござる」
「代わりの馬にすぐ乗るとな」
「それまで乗っていた馬は疲れが癒えるでござる」
乗せている人間がいなくなってだ。
「そして疲れた馬は足が遅くなるでござる」
「疲れた分だけな」
「しかし新しい馬に乗ると」
そうすればというのだ。
「速度はそのままでござる」
「だから馬も多い方がいいか」
「左様でござる」
「そういうことなんだな」
「モンゴル帝国もそうだったでござる」
騎兵隊で有名だったこの国の軍もというのだ、モンゴルは誰もが馬に乗っているので兵も全員騎兵だったのだ。
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