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おっちょこちょいのかよちゃん
85 虚しき勝利
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も大野にキレられて謝る気になれなくなった。
「バカヤロー、俺の力を借りなきゃ負けちまうお前なんて最初っから弱いんだよ!!」
 杉山は心にもない事を言ってしまった。
「何だと、コノヤロー!!」
 二人の喧嘩が始まった。
(本当は、俺だってお前を助けたかったんだよ・・・!!)
「おい、やめろよ!!」
「やめるブー!」
 他の男子が喧嘩を止めようとした。4組の男子は険悪なムードで退場する形となってしまった。応援席に戻っても取っ組み合いの喧嘩は続いた。二人の喧嘩を止めるのに女子達も止めようと必死になった。かよ子も勿論止めに入った。だが、中に割って入った時、大野の手の払いがかよ子の顔に当たってしまった。
「かよちゃん!!」
 まる子が心配した。
「私はいいから二人の喧嘩を止めて・・・」
 取っ組み合いは何とか収まったが、大野と杉山の仲がすぐに修復する事はなかった。なお、藤木は・・・。
「笹山さん、僕、何とか杉山君と騎馬組んで生き残ったよ!!」
「うん、お疲れ様。でも、あの二人が喧嘩して大丈夫かしら・・・」
「あ・・・」
 藤木は笹山から思ったほどの労りは受けられなかった上に、笹山は大野と杉山の喧嘩の方を気にしていた為、少し寂しく思った。自分が空気を読まない行動を取った事もあるが、本当に運の悪い男子である。

 そして、2年生の背負い籠ボール入れも、4年生女子の玉拾い競争(玉入れに使用した球を制限時間内に可能な限り集める競争)、4年生男子のバケツリレーも、そして全学年生が参加する大玉送りも、二人は全く話もせず、お互いそっぽを向いた。

「大野君と杉山君め、こんな時に内輪揉めするなよ」
 観戦してる三河口も愚痴をこぼした。
「だよな、あれじゃあ、負けちまうぜ」
「大丈夫かしら・・・」
 結果はかよ子達4組がいる白組が僅差で勝利した。しかし、他のクラスは大喜びしたものの、4組だけは誰も笑っていなかった。大野と杉山が喧嘩した事を引きずっていた為に。
(杉山君・・・。大野君・・・)
 かよ子も勝ったのにどうしても嬉しくなかった。運動会は閉会した。かよ子と長山は片付け係の為、競技で使用した用具・機材などを倉庫や放送室に戻す作業をしていた。用具の片付けが全て完了すると、かよ子は長山と話しながら教室に帰る。
「長山君・・・」
「何だい?」
「杉山君と大野君、大丈夫かな?」
「さあ、それは自然と仲直りするのを待つしかないかもしれないね。無理に仲直りさせようとしても余計に怒らせるだけだと思うよ」
 長山もそのくらいのアドバイスしかできなかった。
「うん・・・」
 教室に帰ってもしーんとした感じだった。そして帰る。その時、かよ子は思い切って杉山を追いかけた。
「す、杉山君・・・!!」
「山田・・・。お前、頑張ってたな」

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