邂逅編
第7話 終戦、ロデニウス戦役
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賛同する素振りを見せない。
当然である。この国で実際に政を回す官僚に、戦地に立つ者たる軍人の多くは否が応でも現実を目の当たりにしており、これ以上の継戦は困難と見ていたからであった。
加えて、この王都の防御施設も手傷を負っている。城壁の城門は敵の航空兵器の空爆を受けて破壊され、防空の要である飛行場も同様に破壊された。そして首都防衛を担うワイバーン100騎もたった1騎残して全滅し、陸上戦力も3時間前から始まった戦闘で1万人近くの歩兵と3000人以上の騎兵を失い、第一の城壁は敵の超長距離砲撃によって北部の一角が破壊されてしまった。この状況下で徹底抗戦を唱える方が、気が狂っているとしか思えぬ程には、彼らは冷静でいられた。
とどめに、これまで軍事支援をしてきてくれていたパーパルディア皇国が突然何の前触れもなく手を引き、これ以上の支援を受けられなくなってしまった事が、厭戦気分に拍車を掛けていた。今や火薬や大砲の国産化は成せているものの、大砲を作るための良質な鋼は、原料の鉄鉱石と労働力の要である奴隷の輸出によって獲得しており、しかもそれの製造法は技術供与の協定で公開されていないため、生産技術はあっても原料が無いという状態に追い込まれていた。
官僚の殆どが継戦に否定的な様子を見て、エルダーは舌打ちしながら会議室から退出する。その後ろ姿を見送りつつ、ハーク・ロウリア34世はやややつれた顔を上げてアルダに話しかける。
「…アルダよ、誠に降伏しか手はないと考えるか」
「ええ。為政者としてこれ以上民に犠牲と負担を強いる事は得策ではありませんし、何より王都の守備隊が敵に成す術もなく敗北した様子を目の当たりにされているのです。これ以上戦闘を続けて、民から信頼を失えば、間違いなく戦いを続ける事など不可能となります」
『信頼』の二文字に、官僚や軍人達の脳裏に『叛乱』の単語がちらつく。そもそもロウリア王国は複数の諸侯領を統一して成立しており、東方征伐軍の主力もロウリア王に忠誠を誓った貴族の私兵で成り立っている。平民や諸侯の貴族達が自分達を見限れば、最早亡国の危機である。
「…陛下、いえ父上、この国の未来のために決断をお願いします」
アルダの言葉に、ハーク・ロウリア34世は静かに拳を握りしめ、そして玉座に叩きつけた。
10分後、三番目の城壁上や王城内のポールにも白旗が上げられ、同時に王都北部に展開していた守備隊も戦闘を停止。ロウリア王国は日本国自衛隊に対して降伏したのだった。
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西暦2029年/中央暦1639年5月9日 ポート・ハーク沖合
自衛隊によって制圧されているポート・ハーク沖合に、何千隻もの帆船が浮かぶ。その中心にいる大型帆船では、1人の男が、祖国の敗北を耳にしていた。
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