第108話
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久しぶりの故郷を歩いて見て回っていたリィンは眺めのいい場所で景色を見ているクルトに近づいた。
〜ユミル〜
「本当にいい景色ですね。」
リィンが自分に近づくとクルトは感想を口にした。
「ああ、俺も何年も見てきたが一向に飽きないな。雪が完全に溶ければこの景色も見納めにはなるが。」
「ですが、それはそれでまた別の趣きがありそうですね。」
「よくわかっているじゃないか。いつでも歓迎するから、また別の季節にも来るといい。」
クルトの推測を聞いたリィンは口元に笑みを浮かべて同意した。
「ええ、ぜひ機会があれば。リィン少将は、この辺りで”八葉一刀流”の修行を?」
「ユン老師に鍛えてもらったのはもっと山奥の方だ。一ヶ月ほど、自然と共に生活しながら集中的に稽古をつけてもらったな。」
「山籠り……アルゼイド流にも似たような修行法があるそうですが。東方では、割と一般的な修行法なんでしょうか?」
「確かに東方武術には、自然との一体化に重きを置く側面もあるが……あれは多分、ユン老師独自の教え方だろう。食糧と寝床の確保も大変だったが、時にはわざと魔獣をけしかけられたりもして……今思えば、無茶なことも結構やったな。」
クルトの疑問に対して考え込みながら答えたリィンは当時の自分を思い返して苦笑した。
「リィン少将が自覚するくらいなら、相当無茶なことだったんですね。」
「何なんだ、その基準は……」
笑顔を浮かべたクルトの指摘に対して冷や汗をかいたリィンは気まずそうな表情を浮かべた。
「はは、すみません。山籠りか……僕もやってみようかな……」
「クルト……その、何か焦っていないか?」
「そんなことは……いえ、仰る通りかもしれません。」
リィンの指摘に対して一瞬否定したクルトだったがすぐに考え直して肯定した。
「よかったら、話してみないか?」
「……そうですね。男爵夫妻と挨拶している時に改めて感じたことなんですが……皇女殿下が出会った頃に比べて本当に大きく成長しました。皇女殿下だけじゃありません。アルティナやミュゼ、エリスさんも……灰獅子隊―――いえ、リィン隊に所属してから僅かな期間で、それぞれ目覚ましい変化を遂げたように感じます。ですがその中で、僕だけがあまり成長できていない気がして。日々の鍛錬は欠かしていませんし、”戦場の洗礼”も乗り越えたことで”本物の戦場”も平常心で挑み続けられるようになりましたから、それなりに手応えもありはするんですが……」
「……………………そう感じるのはクルトが優秀だからだろうな。」
「というと……」
リィンの指摘を聞いたクルトは不思議そうな表情を浮かべて続きを促した。
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