第百六十七話 正攻法その十三
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「敵の艦隊を殲滅する、幸いにだ」
「敵の指揮官ゴーディマ―氏は一騎打ちに入りました」
「それならですね」
「敵の指揮能力は落ちていますね」
「それもかなり」
「だが日本の艦隊には私がいる」
吉川は将兵達に強い声で話した。
「提督である私がな」
「そしてこちらの数は少ないですが」
「艦艇の質はこちらが上」
「左様ですね」
「あちらはまだ帆船だ」
見ればどの船もそうだった、連合の船はまさに産業革命が成ったばかりの頃の左右に大砲がある帆船ばかりだ。
「鉄の艦艇とは違う」
「風に影響を受け」
「そして攻撃にも脆い」
「そうした船ばかりですね」
「勝てる」
間違いなく、そうした言葉だった。
「我々がな」
「左様ですね」
「ではですね」
「我々としてはですね」
「艦隊での戦を続けますね」
「攻撃力、防御力にだ」
その二つに合わせてというのだ。
「機動力も上だ、そして将兵の質もな」
「そちらもですね」
「我々の方が上だというのですね」
「我等の質も悪くないが」
それでもというのだ。
「日本軍の質は違う」
「鍛えに鍛えられた精鋭ですね」
「猛訓練と戦闘で」
「そうなってきた軍ですね」
「他の軍とは違う、数は二十倍近く違ってもな」
これは大きい、吉川もそれはわかっている。だが吉川はその大きなハンデも考慮してそのうえで考えて語っているのだ。
「これだけの有利な要素がある、ならな」
「戦っていきますね」
「敵の船を一隻一隻沈め」
「そうして勝ちますね」
「そうする」
こう言った。
「まさにな」
「砲撃に術ですね」
「そういったものを使って」
「そうして勝ちますね」
「私も術を使う」
他ならぬ吉川自身もというのだ。
「そうするからな」
「敵軍に霧も出しています」
「それで目を暗ましてもいます」
「攻撃の術も使っています」
「そうもしていますね」
「このまま攻める、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「いいな」
「はい、このままですね」
「攻めていき」
「そして勝ちますね」
「そうする」
まさにというのだ。
「これからな、だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「勝ったと思った瞬間にな」
戦の中でそう思った時にというのだ。
「油断が出来る、だからだ」
「勝鬨をあげる」
「その時まで、ですね」
「そうは思うな」
「そういうことですね」
「やはり兜の緒を締めることだ」
そう思うよりもというのだ。
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