第百十一話 政宗の初陣その七
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「よいな」
「丁度よい頃合いかと」
片倉は政宗に確かな声で答えた。
「むしろこれ以上戦いますと」
「戦い続けてもな」
「兵を疲れさせ失う者が多いので」
「だからであるな」
「はい、ここは米沢まで戻り」
「それでよしとするな」
「そして手に入れた領地をです」
それをというのだ。
「治めていきましょう」
「馬上で天下は獲れぬな」
「むしろ肝心なのはです」
「馬を下りてからであるな」
「はい、ですから」
「ここはであるな」
「領地に守りの兵を置き」
そしてというのだ。
「我等はです」
「米沢に戻りな」
「政に入りましょう」
「それではな」
「初陣で多くの領地を手に入れ多くの勝ちを得ました」
成実はこのことを言った。
「これはまさにです」
「初陣としてはな」
「望む限り最高のもので」
それでというのだ。
「それがしもです」
「これ以上は、であるな」
「求めるべきでないとです」
その様にというのだ。
「申し上げます」
「お主もそう言うな」
「はい」
まさにという返事だった。
「これ以上は」
「ではな」
「ここで下がるべきです」
「うむ、では米沢に戻ろう」
政宗は確かな顔で言ってだ、そうしてだった。
新たに得た領地に守りの兵を置きそのうえで率いていた兵と共に米沢に戻った、すると皆政宗に強い声で言った。
「お見事でした」
「初陣であそこまで勝たれるとは」
「連戦連勝でしたな」
「それも鮮やかな勝ちばかりでした」
「多くの領地も得ましたし」
「初陣とは思えぬまででありました」
こう言うのだった、そして。
輝宗もだ、戻って来た我が子にこう言った。
「よくやった、これでじゃ」
「当家の領地はかなり増えましたな」
「何よりじゃ、しかもじゃ」
それに加えてというのだ。
「お主の武名がじゃ」
「高まりましたか」
「うむ、この奥羽にはまだ鉄砲は殆どない」
「その中で、ですな」
「鉄砲を持ちしかもじゃ」
それに加えてというのだ。
「騎馬隊に持たせて使うなぞな」
「そのこともですな」
「かつてないことでな」
「我等の切り札となりましたな」
「うむ、伊達家の名は大きくじゃ」
「奥羽に響きましたな」
「お主の武名もな、そしてじゃ」
それに加えてというのだ。
「当家に従おうという者もな」
「出て来ておりますか」
「うむ、まことによくやった」
こう政宗に言うのだった。
「この度はな、ではまた出陣の時が来ればな」
「それがしが、ですな」
「出てな」
そうしてというのだ。
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