第97話『予選B』
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何だい?」
この時、晴登は無意識にそう言っていた。実は密かに胸に秘めていた疑問があったのだ。訊くタイミングは今しかない。
「どうして、この大会に参加するんですか?」
ここは魔術の大会。晴登のように部活動の一環として出場するならわかる。しかし、言い方は悪いが、魔術なんてこれっぽっちも知らなそうなこのおじさんが出場するのは、正直違和感でしかない。一体、何を求めているのか……。
「う〜ん、やっぱり賞金目当てかな」
「あ〜賞金ですか〜……って、賞金!?」
ここに来て知らない情報を得て、晴登は混乱。終夜はそんな話1度もしていなかった。
しかし、考えれば妥当な話だろう。この大会には学生だけではなく、大人たちも参戦する。優勝賞品が杖1本じゃ割に合わないというものだ。
「まぁ、優勝なんてできっこないけどね」
そう言って、おじさんは肩を竦めた。言わずもがな、覇軍の存在のせいだろう。それ以外にも、強豪がたくさん立ちはだかっているはずだ。そもそも、たかがレースでこんな位置にいる時点で、勝ち目なんて最初からない。
それなのに、おじさんの表情はそこまで暗くはなかった。
「この大会が"魔術師の祭典"と呼ばれているのは知ってるかい? つまりはお祭りだ。参加しないともったいないだろ?」
「なるほど……」
おじさんはニッと笑ってみせた。その表情は彼の年齢を考えればとても幼く、心からこの大会を楽しんでいるのだとわかる。
晴登にもその気持ちはよくわかる。お祭りなら勝敗よりも楽しむことを優先したい。──いつもならそう思う。
「……でも俺は、勝たなきゃいけない」
今晴登が背負っているのは自分1人ではない。終夜や2年生を筆頭に、仲間の想いを一心に託されているのだ。勝つために、ここに来ている。
そんな晴登の様子を見て、おじさんがフッと笑った。
「やっぱり君は立派だよ。頑張ってね」
「は、はい!」
おじさんにそう声をかけられ、晴登は元気よく頷く。敵対してるのに応援までしてくれるなんて、何て良い人なんだろう。これじゃ、簡単に諦めるなんてできないや。
その後、集団は徐々に進み始め、ついに晴登は分かれ道の目の前にたどり着く。
道の数は3本。どの道も森の奥へと続き、違いがあるようには見えない。
「なら俺が行くのは……右だ!」
困った時は右を選ぶといういつもの癖で、晴登は右の道を選択する。
ちなみに、さっきのおじさんは真ん中の道を選んだようで、ここでお別れとなった。
「さて、かなり人が減ったな」
分かれ道が3本なので、単純計算で1つのルートの人数は3分の1。だからさっきよりも幾分走
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