第97話『予選B』
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なっていた。
「これじゃ全然進めないじゃん……って痛っ!?」
進まないことを愚痴った矢先、目の前の人が急に止まるので背中にぶつかってしまう。これは本格的に渋滞してしまったようだ。
晴登は額を擦りながら、止まった原因を知ろうと前方に目を凝らした。
「……いや見えないんだけど」
悲しいかな、周りは全員晴登より歳上で、身長も高い。集団の後ろに位置する晴登が、前を確認できる訳がないのだ。
仕方ない。少し緊張するが、隣の背の高い優しそうなおじさんに訊いてみよう。
「あの、今どうなってるんですか?」
「ん? あぁ、どうやらこの先が分かれ道になってるから、どの道にするかってことで迷ってるみたいだね」
「げ、分かれ道……」
分かれ道と聞いて、つい最近の嫌な思い出がフラッシュバック。もうゾンビに追いかけられたり、地面から手が出たりする展開だけは勘弁だ。
「というか、レースなのに分かれ道とか用意するのか……」
レースは一本道がセオリーじゃないのか。分かれ道なんて聞いたこともない。一体どんな道が先にあるのかは知らないが、これでは運ゲーもいいところだ。
「いや待てよ、逆にありがたいかも……?」
しかし、今の晴登にこの勝負を実力で乗り越えることはほぼ不可能。それこそ、運に任せる方が勝ち目がある。
つまり、これは願ってもないチャンスなのだ。まだ諦めるには早い。
……おっと、そういえばまだおじさんにお礼を言っていなかった。
「あの、教えてくれてありがとうございました」
「あぁ、いいんだよこれくらい。それよりも、君はもしかして日城中の選手かい?」
ふと、隣のおじさんにそう訊かれてしまう。
影丸といい、この人といい、日城中はやはり何かと目立つらしい。そりゃ最年少チームだから仕方ないとは思うけども。
「はい、そうですが……」
「やっぱり。まだ幼いのに立派だねぇ」
「いえ、それほどでも……」
何を言われるのかと心配になったが、おじさんはただ応援するかのようにそう言った。
「僕の息子が君と同じくらいの歳なんだけど、比べてしまうとどうしてもそう思ってしまうんだよ」
「そ、そうなんですか」
「まぁ、あの子は魔術の才能がないから、この道には進めないんだけどね」
そう言うと、おじさんは乾いた笑みを浮かべた。
これは以前聞いた話なのだが、基本的に魔術の才能は遺伝に由来しないらしい。例えどんなに親が優秀な魔術師だとしてもその子供が優秀とは限らないし、逆に一般的な家庭から凄腕の魔術師が生まれる可能性もある。魔術って不思議だな……。
「……あの、1つ訊いてもいいですか?」
「ん、
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