第百七十八話 アルプスとドナウ川その九
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「努力もしないんだよな」
「全くね」
「じゃあ余計にな」
能力があってもというのだ。
「使わない、それどころかな」
「排除だね」
「国からな、罪を犯していたらな」
その時はというのだ。
「容赦せずにな」
「追い出すんだね」
「若しくは物理的だな」
「処刑とか」
「そうする、というか無能はな」
「例えばモーツァルトに野球をやらせてもな」
芳直が言ってきた。
「果たしてな」
「そっちで天才か」
「まあ多分な」
「そっちの才能はないよな」
「そうだよな」
「けれど音楽だとな」
この分野ではというのだ。
「言うまでもないよな」
「人類史上最高の天才だな」
「だからな」
「その得意な分野だと有能か」
「ある分野で無能でもな」
「そういうことだな」
「だからな、無能な働き者はな」
それはというのだ。
「苦手分野でそうでな」
「得意分野では有能な働き者になってか」
「けれど屑はな」
「いつも言ってる通りにか」
「今剛が話した奴みたいにな」
「どうにもならないか」
「これはもう能力じゃないんだよ」
この問題ではないというのだ。
「屑は本当に何処までいっても屑でな」
「害にしかならないか」
「起きた世界でもいるしな」
そうしたどうにもならない輩はというのだ。
「そしてな」
「こっちの世界でもな」
「お前も心当たりあるだろ」
「ああ、殺人と放火、強盗が趣味のな」
「そんな奴いたな」
「そいつは俺っちが魂ごと消したよ」
「そうしないと駄目だっただろ」
久志は芳直に直接問うた。
「もうそれこそな」
「そうだと思ったからな」
「魂も消したな」
「絶対に更正なんてなくてな」
「生きてく限り悪事をしてただろ」
「そう判断したからな」
それ故にというのだ。
「俺っちもそうしたさ」
「そういうことだよ、本当にな」
「屑はいらないか」
「無能でも確かな心ならその分野で努力して成長するか」
「別の分野で成功するか」
「そうなるからな」
だから普通の無能はいいというのだ。
「要点は適材適所ってことだよ」
「それが当てはまらない奴になると」
淳二はステーキの横にある付け合わせの野菜、切られたピーマンやニンジンを食べた。そうしてからあらためて話した。
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