世界征服!!
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1973年 日本国 東京
「はぁ………」
日曜日、家族連れや若い男女で賑わう正午の公園のベンチに腰掛け、溜息をつく青年。間もなく30歳になろうとしている彼だが彼自身に言わせればまだギリギリ『青年』で通る年齢である。
だが青年を悩ませているのは年齢のことではない。
『地球意思との接触』
それが青年の研究テーマだった。
彼は城南大学の考古学者である。
この地球上……いや、日本のどこかには地球意思との接触ポイントがあり、それを利用することで人類は新たなステージへと進むことができる。長年の研究の末に辿り着いた新発見である。
そして彼は実際に実地調査として国内……とりわけ風都市や夢見町、沢芽市などの街を中心に訪れ、ある程度のポイントの見当はつけていた。
しかし彼の研究論文は到底、学会に理解できるものではなく、「新米の癖に生意気な!」、「倫理的に問題有り」と罵られ、否定されるだけで終わってしまった。
学会の認可を得られなければ、予算も下りない。最悪、学者生命を抹殺される可能性もあった。彼は渋々、研究を中止することになったのだ。
だが青年は諦めきれず、どうにかして研究を再開できないかをこうして昼間から悩んでいたのだ。
「どこかに地球意思との接触ポイントがあるはずなんだ……それさえ見つけられれば……」
青年が俯いた顔を上げた時、ふとあるものが目に入った。
目の前の通りに不審な集団が現れたのだ。一様に目をギラつかせ、目出し帽を被った尋常ではない雰囲気をまとった10人程の男達である。
何が始まろうとしているのか分からず、青年は立ち上がる。
すると彼らは背負っていたバックパックから黒い塊を取り出した。
青年はそこで生まれて初めて生で"実物の銃"を見た。それも中東や南米の紛争で使われていそうな小銃や拳銃ばかりだった。中には手榴弾らしきものを持っている者もいた。
「あっ………!」
思わず驚きが口から出るよりも通りがかりの市民の頭蓋骨が砕け、脳漿がアスファルトに飛び散る方が早かった。
辺りは騒然とし、パニックに陥る。
パパパパパパパ!!!!
「キャアアアアアア!!!」
「グエッ!!」
「ヒィィ!た、助け……!!」
青年は信じられなかった。
目の前の集団は人を殺しているのだ。
確かにニュースを見れば、『ベトナム戦争』や『カンボジア内戦』などの凄惨な人と人との殺し合いのことを報道しているがそれはどれも"遠い国"の話であり、現実味がわかなかった。
だが目の前で起きている虐殺はここ、日本で……尚かつ自分のよく知っている場所で起きている。未だにこれが現実なのだと信じられなかった。
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