邂逅編
第3話 迫る戦火
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成及び他党への根回しを行って下さい」
『はい!』
閣僚一同が垂水の指示に頷いて応える中、垂水はそっと視線を別の場所に移す。そしてその先に座る、1人の男と目を合わせる。
「…もし国家の将来よりも目先の利益のみを求めて牛歩戦術を取る様な者がいれば…その時はお願いします」
「…分かりました」
垂水の頼みに対し、防衛省情報局長官、渥美大輔はそう言いながら頷いた。
2時間後、臨時国会が開会され、ロデニウス大陸でのロウリア王国の軍事行動に対して、クワ・トイネ公国及びクイラ王国を救援するために自衛隊を派遣するべきか否かの本会議を開催。
当然ながら野党勢力の半数は事実上の派兵に反対したが、理想を叶えるための政権奪取よりも現実的な国家の維持と国民の生命を優先する者も多く、合計12時間にも及ぶ論戦の末、衆参両院ともに三分の二の議席の賛成によりクワ・トイネ公国及びクイラ王国との正式な安全保障条約―これまでは相互不可侵条約しか結んでいなかった―の締結と自衛隊の対外派遣が決定された。
同時期に台湾及び韓国も、軍の派遣を決定し、3カ国の転移国からなる多国籍軍がクワ・トイネ公国とクイラ王国の味方に回る事となった。
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西暦2029年/中央暦1639年3月29日 ロウリア王国 ポート・ハーク市 王国海軍基地
ロウリア王国最大の港湾都市であるポート・ハーク市に、高らかに喇叭が鳴り響く。
沖合には何百何千もの帆船が停泊し、その全てに多くの将兵が乗り込んでいる。そして一つの桟橋には、一層豪華に装飾が施された軍船が停泊していた。
「間もなく出撃ですね、シャークン提督」
その桟橋の上で、1人の青年がロウリア王国海軍を率いる将の1人、シャークン・ジン・カルディアに声をかける。シャークンは声をかけてきた者を見て目を丸くする。
「アルダ殿下…珍しいですね、戦いを疎む貴方がこの場に参られるとは」
シャークンの言葉に、青年―アルダ・ジン・ローア王子は苦笑を浮かべながら答える。
「戦争を疎む者でも、王族に生まれた以上は激励の一つも出来なければ民の上に立つ者として失格とされるからな。 分かってはいるだろうが、如何に格下の相手だろうと侮らぬ事だ。 相手も火砲を持っているというのだろう?『追い詰められたワイバーンは風竜をも食らう』という事もあるから、絶対生きて帰って来てくれ」
「…御意に。常に将として心掛けている事を貴方に言われると、何だか面映ゆいですね。では、これにて…」
シャークンはアルダに一礼し、自身の座乗艦に向かう。その様子を遠巻きに見つめていたアルダは手を振りつつ、心の中で呟いた。
(…叔父上、確かにロデニウス大陸を統一する事は
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