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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第52話 軍と家族
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と思うんだけど」
「う〜ん」
「だからお願い。手を貸して」

 別に仏教徒でもないアントニナが、手を合わせて拝んでくるのを見て、俺は一度雲一つなく輝くハイネセンの夜空を見上げた。ヤンがユリアンから軍人になりたいと最初に相談されたのは二九歳のころか。今の俺は二五歳だが、前世の年齢も含めれば五〇を超えている。独り身で子供が当然いないのはヤンも同じだが、アントニナからの相談に対するアドバイスではヘイゼルの瞳の一件を上げるまでもなく俺には向いていないように思える。つまるところ俺は精神的にこちらの世界の年齢以上に成長していないのかもしれない。

 だがアントニナにとってみれば俺はこの一件においては縋れる唯一の家族だろう。レーナ叔母さんもいろいろ考えた上で反対していると推測できるが、詳しくその理由を話していないのかもしれない。贔屓目抜きにしてもアントニナは運動神経が抜群で頭もよく回る子だが、軍人となるには致命的な欠点もある。そこを言うのはやはり正確には『家族ではない』俺の仕事なのだろう。俺はアントニナをガレージに待たせ、一度母屋に戻ってレーナ叔母さんにアントニナと散歩に出かける旨伝えると、再びガレージに戻ってゴールデンブリッジ街の歩道を二人で歩き始めた。

「アントニナ、なんで軍人なんかになりたいんだ?」
 無言で一〇数分歩いた後、俺は軽い口調でアントニナに言った。
「言うまでもなく軍人は国家公務員の殺し屋だ。いくら御大層な題目を述べたところで、やっていることは人殺し以外のなにものでもない。そして殺しにかかる以上、こちらが殺されることも当然ある」
「うん。でも僕はボロディン家の人間だし」
「親の稼業を継がなきゃいけないなんて法律はないさ。軍人家系なんて言い方を変えれば代々殺し屋の一族と名乗っているようなものさ。あまり褒められたものじゃないだろう?」
「……じゃあ、なんでヴィク兄ちゃんは軍人になったの?」
「どうしてもやらなくてはならないことがあった。なす為には政治家になるか、軍人になるか、官僚になるか、そのいずれかしか道はなかった。そして一番確実だったのが軍人だった」

 自由惑星同盟を金髪の孺子の侵略から救う為には、孺子を確実に自分の手で殺せる軍人一択しかないのだが、敢えて方法論としてはほかにも道はある。だがそのどれもが不確実であり、スタートラインにつく前にゴールしてしまうシナリオしか思いつかなかった。

 自分がこの世界の未来を知っているなどと、口が裂けても言えない。それはアントニナにですらもだ。現時点でほぼほぼ原作通りに物語は進んでいるが、確実に一一年後、自由惑星同盟が新銀河帝国に併呑されるかとは言い切れない。言い切れない故に、俺は軍人になるしかなかった。

「ヴィク兄ちゃんのやらなくてはならないことってなに?」
「それは
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