第二十六話
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目が覚めた。
「タスク兄さん、おはようございます」
左手を握っているのは、ユウだ。
手の甲をほっぺたにつけ、彼女はずっと俺の起きるところを待っていたらしい。
それは、彼女の手がかなり温かいからだ。
「おはよう、そういえば今日の授賞式何時からだっけ?」
そういい辺りを見回してみる。
見知らぬ天井はハイライトを浴びているように眩しく、壁、ベット小物は、清潔な白一色である。
鼻からアルコールの消毒液のようなつんとした匂いが広がっている。
右腕には点滴がされており、赤い液体、白い液体の2種類が、俺の体の中に入っていた。
「授賞式は一週間前ですよ……」
え、一週間!? 俺はどれだけ寝ていたんだ!?
彼女の、心配している顔。
「ま、マジ? どれだけ寝ていたんだよ……」
右手で、顔を拭くようにがちがちと擦る。
「私…… 心配したんですよ?」
ふと彼女のほほに触れている左手に、滴が付いたようなような感触が伝わる。
それから彼女の顔はこちらから確認できないほどに、前髪がその顔を隠していた。
彼女は俺の妹のような存在だ。
昔から俺のことを心配してくれて、独りにしないよう俺の相手をしてくれた彼女。
右手で彼女のサラサラな髪を撫でた。
「ごめんな余計な心配かけちゃって」
精一杯の謝罪の言葉を彼女に告げる。
そういえばこうして二人で話すのも最近はなかったなと気づいた。
「もう、タスク兄さんの馬鹿、くさい、変態、M字ハゲ、トイレかなり長い」
き、傷つくなあ……
はははと心の中で彼女の罵倒を黙って刻み込む。
これだけ心配させたんだからまあ、あたりまえの償いだなと。
しかし最後のトイレ長いは余計じゃないんですか?
「もう…… とにかく、死ぬなら私よりも遠くて、すぐにはいけないところで死んでくださいね」
その言葉と共に、俺の手が彼女のおでこに当たる。
そして彼女のくちから笑顔が出てきた。
「ああそうだな、まあ俺死なねえけど」
冗談のようで本当のことを彼女に告げた。
俺の能力は、人を超越した超再生、大量出血以外では倒れない不死身の体。
まあこの能力を知らない彼女には冗談のように聞こえるだろう。
「知ってます、あの盾田を倒したんですから。そう簡単に死なないことなんて」
彼女は、満天の笑顔で俺の顔を見ていた。
眩しいその笑顔、彼女にとって誇らしいとも感じ取れる。
ああ、もうキュンキュンしちゃうじゃんか……
彼女のその笑顔に顔が熱くなってしまった俺は、慌てて視界をそらす。
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