第十八話
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
視界が暗闇へとゆっくりと霞んでいく、奴の声が途切れ途切れに聞こえる。
「――俺のドロップスタンプをまともに受けて、体の形がまともだった人間はいねえ」
ゆっくりと男は近づく、
ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ――――
近づくほどに四つほど、地を歩く音が聞こえる。
「だがおめえは、頑丈すぎる。バケモノかおめえはよお――」
薄い黒い影がだんだんと近づいてくるのが見えてきた。
体は力が入らずにいた、こんなところで何をしているんだ。
ダメージが想像以上にあったのか、首の可動範囲が狭くなっている。
そんな動かない体に、鞭を打ちながら、音の正体を確認するべく、顔を少しづつ上げる。
首の可動範囲が明らかに狭くなっていた。
だからだろうか、小さく動くごとに凄まじい激痛が伴う。
しかし何かバケモノだ…… お前の力技の方がバケモノだよ脳筋能力者め。
そんなことを心の中で告げ、かすかに口元が緩んだ。
体が動かない。
そう、常識を超える衝撃をモロに食らうと、バケモノなら見ず知らず、動かなくなってしまうのだ。
ただ、俺の場合は背中から衝撃を受け止めたため、脊髄へのダメージが、キャパを超えていた。
多分だろうが、背骨の大半は壊滅しているとみている。
ち〇この感覚が無くなっていた。
負け、か……
なんでこう正面からの戦いを挑んだのだろうか。
相手は、もう正面からしか攻撃手段はないと分かっていたのに。
しかも、見るからに、突撃しか能のない人間だ。
そんな人間に正面から挑んでしまった。
俺は馬鹿だ。大バカ者だ。
勝つなら正面からの戦いを避けるべきだったと思う。
これらは言い訳にすぎない。
正面から彼と一騎打ちをしようとしたら相手が強すぎた。
ただそれだけの話。
我ながらに、間抜けな話だ。
体が遮蔽物のコンクリートにめり込んだまま、座っているように俺の体はなっていた。
「とどめだぜ…… 無能野郎」
気づけば彼は、目の前に。
その手が届きそうなほどの距離に、彼の言葉を聞き入れた。
今になって、真正面から戦いを挑んで満足のような気分がたしかにあった。
すがすがしくもあり、彼の行動をしっかりと見届けていた。
この夢のような場面を淡々と見ていた。
俺の人生は……
「お前のここまでの努力だけは認めるぜ。
なんせお前は、卍城王也、盾田剣士と互角と、それ以上の力を見せたからな」
薄くではあるが、何かを握りしめている手が頭上にあった。
奴の腕であるとわかる。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ